SSUGは会員の自己研鑽と相互の新睦を目的とする団体です。

中田清穂のIFRS徹底解説

第3回 「現在の決算手続きに影響を与えかねない経済的耐用年数の決定」

前回の「経済的耐用年数のあの手この手」に引き続き、今回も経済的耐用年数の話です。

前回説明した「あの手この手」で、なんとか従来の税法基準の耐用年数でIFRSでも処理できることが、会計監査人と合意できる場合は良いのですが、どうしても従来の税法基準とは異なる耐用年数にしなければならなくなった際に、そのかい離の程度が問題となることがあります。
すなわち、従来の税法基準での耐用年数とIFRSベースでの経済的耐用年数とのかい離の程度です。

IFRSベースでは、従来と異なる耐用年数になることは仕方ないとしても、日本基準では従来の耐用年数にすることが多いと思われます。

しかし、従来の税法基準での耐用年数とIFRSベースでの経済的耐用年数のかい離の程度が著しい場合には、日本基準の耐用年数も経済的耐用年数にしなければならない可能性があるので、十分な注意が必要です。

これには前回の最後にご紹介した、日本公認会計士協会が税法上の耐用年数としても、会計監査においては適切と判断するよう認めている委員会報告が関係しています。
正確には、『監査第一委員会報告第32号 耐用年数の適用、変更及び表示と監査上の取扱いについて』という委員会報告です。

この監査第一委員会報告第32号によると、税法耐用年数については、「経済的使用可能予測期間と著しい相違がある等の不合理と認められる事情のない限り」、監査上差し支えないものとして取り扱うことができるという内容になっています。

したがって、この度IFRS適用ということで「経済的使用可能予測期間」を決める際に、税法耐用年数と「著しい相違」があるならば、実は、従来の日本基準で適用していた耐用年数自体が不適切だという判断になりかねません。

実際にこのようなケースで、会計監査人から日本基準での税法耐用年数からの変更を突き付けられているプロジェクトが出始めています。
耐用年数の変更は、「見積もりの変更」にあたるので、遡及処理が要求される可能性は低いと思われますが、IFRS対応をする上で、「ヤブヘビ」にならないよう注意していただきたいと思います。

バックナンバー

第58回 「米国基準を適用している企業の動き」
第57回 「グループ会計方針での重要性の判断規準」
第56回 「開発費の償却費は原価算入するべきか?」
第55回「闇に葬られてしまった有給休暇引当金問題」
第54回「金融商品としての売掛金の開示」
第53回「馬鹿に出来ない!?最初のIFRS財務諸表をアニュアルレポートで開示するメリット」
第52回「単体財務諸表へのIFRS任意適用の動き」
第51回「中田版『IFRSの誤解』 子会社の会計方針の統一」
第50回「組替仕訳の繰越手続き(開始仕訳)の考え方」
第49回「金融庁「IFRSに基づく連結財務諸表の開示例」の「留意事項」と「重要性の方針の開示例」」
第48回「定率法の採用を表現している企業の開示」
第47回「グループ法人税制が与える連結決算への影響 中小特例の取扱い」
第46回 グループ法人税制が与える連結決算への影響
「連結法人間の寄附金に係る税効果の会計手続き」

第45回 グループ法人税制が与える連結決算への影響「固定資産未実現に係る税効果の会計手続き」
第44回 「日本取引所(2015.03)の現金同等物の開示」
第43回 「HOYA(2015.03)の重要な会計方針の要約」
第42回 「丸紅の初度適用(短信からの初度適用)」
第41回 「改定されたIAS第1号「財務諸表の表示(開示イニシアチブ)」の
適用状況調査」

第40回 「連結決算短信での「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の記載状況」
第39回 「IFRS財団は日本の現状をどう見ているか」
第38回 「4つの会計基準収斂の方向性」
第37回 「IFRS適用の対応コスト」
第36回 「開示ボリュームを激減させる具体例」
第35回 「開発費資産計上の実態と分析」
第34回 「有給休暇引当金開示の実態と分析」
第33回 「注記情報の大幅削減が可能に!!」
第32回 「任意適用積み上げの動向と強制適用の可能性」
第31回 「膨大な注記への対応」
第30回 「さまざまなグループ会計方針書」
第29回 「IFRSでの勘定科目体系」
第28回 「影響度調査後のプロジェクト体制」
第27回 「グループ会計方針」
第26回 「影響度調査が終わったら」
第25回 「自民党・日本経済再生本部の「日本再生ビジョン」におけるIFRSの記載」
第24回 「影響度調査での重要性」
第23回 「IFRSの誤解:300万円ルールなどがないIFRSではすべてのリースがオンバランスになる」
第22回 「有給休暇引当金の対応事例」
第21回 「有給休暇引当金を計上しないケース」
第20回 「資本的支出後の減価償却資産の償却方法等」
第19回 「新指数『JPX日経インデックス400』はIFRS任意適用拡大に影響があるか」
第18回 「グループ会計方針」
第17回 「中国子会社の決算期ズレへの対応方法」
第16回 「IFRSの任意適用拡大に向けての経団連の期待と役割」
第15回 「日本企業をダメにする会計制度(第3弾) ~リース会計~」
第14回 「日本企業をダメにする会計制度(第2弾)~のれん~」
第13回 「J-IFRS(日本版IFRS)のねらい」
第12回 「日本企業をダメにする会計制度~開発費会計~」
第11回 「IFRS任意適用の動向」
第10回 「減損の兆候」
第9回 「外貨建取引の換算と個別会計システム」
第8回 「支払利息の原価算入」
第7回 「耐用年数変更の記載事例」
第6回 「減価償却方法変更の記載事例」
第5回 「定額法への減価償却方法の変更の動向」
第4回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応(その2)」
第3回 「現在の決算手続きに影響を与えかねない経済的耐用年数の決定」
第2回 「経済的耐用年数のあの手この手」
第1回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応」

著者プロフィール

中田 清穂(なかた せいほ)
青山監査法人にて米国基準での連結財務諸表監査に7年間従事。
旧PWCに転籍後、連結経営システム構築プロジェクト(約10社)に従事。
その他に経理業務改善プロジェクトや物流管理プロジェクトにて、現場業務の現状分析や改善提案に参画。
旧PWC退社後、DIVA社を設立し、取締役副社長に就任。DIVA社退社後、独立。