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中田清穂のIFRS徹底解説

第8回 「支払利息の原価算入」

IAS第23号「借入費用」では、ある資産の購入代金を支払い始めて利用できるようになるまでに「相当の期間」がかかるもの(これを「適格資産」といいます)については、支払利息の一部を、その資産の取得原価に含めなければなりません。

この支払利息には、その資産を購入するための借入金から発生する利息だけでなく、一般的な運転資金のための借入金から発生する利息も含まれますし、その資産とは関係のないファイナンス・リースに関連する財務費用も含まれます。

したがって、有利子負債が多額であったり、ファイナンス・リースを多く活用しているような企業では、十分な注意が必要です。
忘れてならないのが、子会社の存在です。
親会社ではファイナンス・リースが全くなくても、子会社で多く活用されていれば、単純には無視できないのです。

IAS第23号「借入費用」の主旨は、その資産を使えるようにするために必要になった支出は、すべてその資産の取得原価にするべきだという考え方があります。
一般的な運転資金のための借入金も、その資産を購入しなければ繰り上げ返済などで返せたでしょう。他の資産をファイナンス・リースで調達する場合も、その資産を購入しなければ、手元に残っていたはずの資金で購入ができたのであって、リースにする必要はなかったでしょう。
一般的な運転資金のための借入金も他の資産をファイナンス・リースで調達する場合も、その資産を購入することと無関係ではなく、発生した利息などの財務費用も、その資産を取得することと関連があるということになるのです。

したがって、最近の連結ベースでの財務戦略として、銀行借入などの資金調達は、グループ各社がばらばらに行うのではなく、親会社が一括して行い、資金が必要な各子会社には、親会社から貸し付けるしくみが増えています。
この場合、支払利息などの財務費用は親会社で発生しますが、資産の購入は子会社になるので、事態は複雑になるのです。

したがって、子会社の資産の取得原価に含めるべき財務費用について、その金額を誰が決めるのか、どの範囲にするのか、どのタイミングで決めるのかといった問題が発生します。

① 資産化する借入費用の決定主体
決定主体としては二つ考えられます。
一つ目は、子会社です。親会社が集中一括して資金調達をしていない場合には、子会社が自力で調達するのですから、子会社で決めることができるでしょう。
二つ目は、親会社です。親会社が集中一括して資金調達をしている場合には、発生した財務費用について子会社では把握できないので、親会社で決めるほかありません。

② 資産化する借入費用の範囲
資金調達を個社がばらばらで行い、グループ内での貸付や借入が全然なければ、資産化する借入費用は、各社で調達された借入やファイナンス・リースから発生したものだけを対象範囲とすればいいでしょう。
反対に、グループ内での貸付や借入が行われている場合には、グループ全体での借入金額やファイナンス・リースの負債残高と、グループ全体で発生した支払利息やリース費用を集計して、「資産化率」をグループベースで計算することになります。

③ 資産化する借入費用の決定タイミング
普通に考えると、資産化する借入費用は期末までに発生したものを集計するので、決算日以降に決定することになります。
しかし、発生する財務費用はある程度見込みがたつので、期末を待たなくても決められることも多いと思います。
さらに、有利子負債やファイナンス・リースの残高が、毎期大きく変動しない企業グループでは、年初に決めた予定額を利用することも考えられるでしょう。

これらの検討項目を整理すると、通常は、

  「適格資産」の確認 ⇒ 「資産化率」の計算
  ⇒ 資産化する借入費用の決定

という手続きで済みます。

しかし、グループ内での貸付や借入が行われている場合には、以下の手続きが必要になります。
①個別決算の前に、グループ内のどの企業に「適格資産」があるかを
 把握し、
②グループ内の企業の借入金やファイナンス・リースに関する
 残高情報を収集・集計し、
③グループ内の企業の借入金やファイナンス・リースに関する
 財務費用を収集・集計し、
④②と③から、グループベースでの「資産化率」を計算し、
⑤④の計算結果を「適格資産」をもつ子会社に通知し、
⑥⑤の子会社は、④の「資産化率」を用いて取得原価に含める
 借入費用を計算し、
⑦「適格資産」が有形固定資産である場合には、減価償却計算を
 行い、
⑧その有形固定資産が製造設備などの場合には、⑦の減価償却費を
 含めた原価計算を行い、
⑨⑧の結果を受けて、その期の棚卸資産と売上原価を確定させて、
 個別決算を締める。

何も考えずにIAS第23号「借入費用」に対応すると、会計監査人から上記のような厳密というか厳格な対応が要求されて、とんでもない負担がかかり決算に膨大な時間がかかるでしょう。
したがって、借入費用の資産化については、その決定主体、範囲およびタイミングなどについて、事前に十分検討したうえで対応することが望まれます。
当然、これらの内容については、会計監査人と事前の「協議」をしておくことも忘れないようにしてください。

以上

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第12回 「日本企業をダメにする会計制度~開発費会計~」
第11回 「IFRS任意適用の動向」
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第3回 「現在の決算手続きに影響を与えかねない経済的耐用年数の決定」
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第1回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応」

著者プロフィール

中田 清穂(なかた せいほ)
青山監査法人にて米国基準での連結財務諸表監査に7年間従事。
旧PWCに転籍後、連結経営システム構築プロジェクト(約10社)に従事。
その他に経理業務改善プロジェクトや物流管理プロジェクトにて、現場業務の現状分析や改善提案に参画。
旧PWC退社後、DIVA社を設立し、取締役副社長に就任。DIVA社退社後、独立。