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中田清穂のIFRS徹底解説

第18回 「グループ会計方針」

今回は、「影響度調査」が終わり、洗い出された課題の検討も終わった後で作成する、「グループ会計方針」についてお話したいと思います。

「グループ会計方針」は、親会社だけでなく、国内子会社も海外子会社も、さらには、持分法を適用する関連会社にも適用されなければならない、グループ全体での統一ルールです。したがって「グループ会計方針」は、以下の要件を満たす必要があるでしょう。

① IFRSに準拠したものであること
② 子会社・関連会社も含めて、経理・決算現場で使える実務的なもの
  であること

この二つの要件を満たすためには、上位概念的なもの(IFRSの原則レベル)と、下位概念的なもの(実務指針レベル)の、2階層にすると良いでしょう。

現在進められているIFRS対応プロジェクトでは、上位概念的なものを、「会計方針」、「会計基準」、「レイヤー1」、「第一階層」などと呼んでいるようです。
また、下位概念的なものを「実務指針」、「解釈指針」、「具体例」、「レイヤー2」、「第二階層」などと呼んでいるようです。

そして、上位概念的なもの(レイヤー1など)で、上述の要件①を満たすように記載します。また、下位概念的なもの(レイヤー2など)で、上述の要件②を満たすように記載するのです。

したがって、上位概念的なもの(レイヤー1など)の書きぶりは、IFRSの基準書をそのまま写したかのような記述になります。

例えば、「当社の有形固定資産の残存価額と耐用年数は、IAS第16号『有形固定資産』第51項の規定に従い、毎事業年度末に見直すこととする。」といった記述になります。
これでは、IFRSの規定に準拠したことにはなりますが、実際の決算実務において、実現可能な方法や手段がわかりません。

そこで、下位概念的なもの(レイヤー2など)で具体的な手続きや例を記述します。

例えば、「耐用年数は、毎事業年度末である3月初旬までに、有形固定資産の利用現場部門に対して、経理部門が使用予定年数に関する変更確認を行う。有形固定資産の利用現場部門は、使用予定年数を変更する資産がある場合には、その旨及び変更後の使用予定年数を3月末までに経理部門に報告する。当該報告がない場合には、経理部門は、使用予定年数を変更する資産はないものとみなし、耐用年数の変更は行わない。」といったような内容になります。

会計監査人である監査法人に、IFRSの会計アドバイザリーを依頼しているプロジェクトでは、上位概念的なもの(レイヤー1など)を監査法人に作成してもらうケースが多いようです。しかし、この場合でも、取扱いとしてはあくまでも「たたき台」であり、正式なものは企業サイドで完成させるという取扱いになるようです。
これは、監査の独立性の問題もあり、また財務諸表の作成責任は企業経営者にあるため、その作成方針を会計監査人が作成することは不適切との判断があるからです。

したがって、下位概念的なもの(レイヤー2など)は、監査法人ではたたき台すら作ってもらえません。
「監査契約とは別にアドバイザリー契約を締結し、監査報酬とは別にコンサルティング報酬を払うわけだし、当初から『グループ会計方針を作成することもアドバイザリーには含まれていますよ』と言われていたから、決算実務がきちんと回るような実務的な会計方針を作ってくれるものとばかり思い込んでいたが、プロジェクト終了間際で、どんでん返しに合った気分だ。結局実務指針は自分たちで作るはめになってしまった」などといった愚痴を最近よく耳にします。

監査の独立性などの観点からは、監査法人の対応は当たり前のことなのです。
結局、期待の方が高すぎたわけですが、自分の会社に適した決算実務の指針は、誰にも頼ることはできないのです。外部の監査法人やコンサルタントは、選択肢の提示はしてくれても、どれにすべきかを決めてはくれないのです。

以上

バックナンバー

最終回 「日本の会計基準とIFRSの「強制適用」」
第65回 「影響度調査の盲点」
第64回 「IFRS決算体制はいつから検討するか」
第63回 「IFRSの誤解:IFRSは時価会計的でM&Aのためにある」
第62回 「棚卸資産の評価とAging(長期滞留)」
第61回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨(その2)」
第60回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨」
第59回 「IFRSの誤解:IFRSは投資家にとっても役に立たない」
第58回 「米国基準を適用している企業の動き」
第57回 「グループ会計方針での重要性の判断規準」
第56回 「開発費の償却費は原価算入するべきか?」
第55回「闇に葬られてしまった有給休暇引当金問題」
第54回「金融商品としての売掛金の開示」
第53回「馬鹿に出来ない!?最初のIFRS財務諸表をアニュアルレポートで開示するメリット」
第52回「単体財務諸表へのIFRS任意適用の動き」
第51回「中田版『IFRSの誤解』 子会社の会計方針の統一」
第50回「組替仕訳の繰越手続き(開始仕訳)の考え方」
第49回「金融庁「IFRSに基づく連結財務諸表の開示例」の「留意事項」と「重要性の方針の開示例」」
第48回「定率法の採用を表現している企業の開示」
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第46回 グループ法人税制が与える連結決算への影響
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第45回 グループ法人税制が与える連結決算への影響「固定資産未実現に係る税効果の会計手続き」
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第43回 「HOYA(2015.03)の重要な会計方針の要約」
第42回 「丸紅の初度適用(短信からの初度適用)」
第41回 「改定されたIAS第1号「財務諸表の表示(開示イニシアチブ)」の
適用状況調査」

第40回 「連結決算短信での「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の記載状況」
第39回 「IFRS財団は日本の現状をどう見ているか」
第38回 「4つの会計基準収斂の方向性」
第37回 「IFRS適用の対応コスト」
第36回 「開示ボリュームを激減させる具体例」
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第33回 「注記情報の大幅削減が可能に!!」
第32回 「任意適用積み上げの動向と強制適用の可能性」
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第30回 「さまざまなグループ会計方針書」
第29回 「IFRSでの勘定科目体系」
第28回 「影響度調査後のプロジェクト体制」
第27回 「グループ会計方針」
第26回 「影響度調査が終わったら」
第25回 「自民党・日本経済再生本部の「日本再生ビジョン」におけるIFRSの記載」
第24回 「影響度調査での重要性」
第23回 「IFRSの誤解:300万円ルールなどがないIFRSではすべてのリースがオンバランスになる」
第22回 「有給休暇引当金の対応事例」
第21回 「有給休暇引当金を計上しないケース」
第20回 「資本的支出後の減価償却資産の償却方法等」
第19回 「新指数『JPX日経インデックス400』はIFRS任意適用拡大に影響があるか」
第18回 「グループ会計方針」
第17回 「中国子会社の決算期ズレへの対応方法」
第16回 「IFRSの任意適用拡大に向けての経団連の期待と役割」
第15回 「日本企業をダメにする会計制度(第3弾) ~リース会計~」
第14回 「日本企業をダメにする会計制度(第2弾)~のれん~」
第13回 「J-IFRS(日本版IFRS)のねらい」
第12回 「日本企業をダメにする会計制度~開発費会計~」
第11回 「IFRS任意適用の動向」
第10回 「減損の兆候」
第9回 「外貨建取引の換算と個別会計システム」
第8回 「支払利息の原価算入」
第7回 「耐用年数変更の記載事例」
第6回 「減価償却方法変更の記載事例」
第5回 「定額法への減価償却方法の変更の動向」
第4回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応(その2)」
第3回 「現在の決算手続きに影響を与えかねない経済的耐用年数の決定」
第2回 「経済的耐用年数のあの手この手」
第1回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応」

著者プロフィール

中田 清穂(なかた せいほ)
青山監査法人にて米国基準での連結財務諸表監査に7年間従事。
旧PWCに転籍後、連結経営システム構築プロジェクト(約10社)に従事。
その他に経理業務改善プロジェクトや物流管理プロジェクトにて、現場業務の現状分析や改善提案に参画。
旧PWC退社後、DIVA社を設立し、取締役副社長に就任。DIVA社退社後、独立。