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中田清穂のIFRS徹底解説

第28回 「影響度調査後のプロジェクト体制」

今回は、「影響度調査」終了後のプロジェクト体制についてお話したいと思います。

影響度調査までは、1名から数名が、通常の経理・決算業務を兼務しながら、会計基準の相違点を把握し、会計方針の採用について選択肢を整理し、影響を受ける業務とシステムを識別するというタスクをこなすことが多いようです。

ここまでは、一つのチームでこなせるのですが、この後、整理された会計方針の選択肢のうち、どの方針を採用するか、業務やシステムをどのように変更するかについて、検討し、決定しなければならない状況で、一つのチームでは、なかなかタスクをこなすことができなくなります。

また、監査法人主導で進められるプロジェクトでは、以下の問題が発生しやすいようです。

(1)IFRSのすべての基準について網羅的に論点をつぶすため、メリハリがない。
当社にはあまり関係ないと思われる論点についても、一通り丁寧に検討して全部を整理するため時間がかかる。

(2)アドバイザリー・サービスとして参画しているが、基本的に会計監査人の意識が強い。
したがって、業務への影響やシステムへの影響、さらには来期以降必要となる予算の獲得についてあまり関心がないため、影響度調査後のスケジュール感にずれが生じやすい。
監査法人にはスケジュール的な切迫感があまりないようです。

結局、影響度調査で識別された論点の中でも、特に会計方針策定に関する論点を中心に進めることになります。そして、IFRS適用初年度までに完成させればよいという意識が強いため、暫定会計方針の「案」を作っては見直すことを繰り返していくイメージになりがちです。

しかし、企業サイドとしては、IFRSの影響を受ける業務を変えたり、システムについても変更する必要がでてくるので、あまり時間をかけてはいられないという意識が働くのです。

ここに両者の間にスケジュール感のスレが生じるのです。

したがって、暫定会計方針の「案」を作っては見直すことを行いながら、それとは別に、自社において特に影響がありそうな業務やシステムごとに検討チームを組織することが有効だと思います。
この検討チームは「分科会」とか「個別調査チーム」などと呼ばれています。

どのような論点について検討チームが編成されるかは、各論点が企業に与えている影響によって異なるのですが、通常以下の論点についてはチーム編成がおこなわれるようです。

①収益(売上高計上プロセス)
②有形固定資産
③リース
④製品原価計算

これらの論点は、業務の変更やシステムの変更が必要な場合、非常に多くの時間を必要とするので、個別にチームを編成し、経理部門だけではなく、現場部門や経営層を含めて検討し、決定をしなければならないものばかりなのです。

したがって、影響度調査終了後は、プロジェクト体制を変えて、また、監査法人のスピード感とも異なる進め方をしていくことが必要になるでしょう。

以上

バックナンバー

最終回 「日本の会計基準とIFRSの「強制適用」」
第65回 「影響度調査の盲点」
第64回 「IFRS決算体制はいつから検討するか」
第63回 「IFRSの誤解:IFRSは時価会計的でM&Aのためにある」
第62回 「棚卸資産の評価とAging(長期滞留)」
第61回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨(その2)」
第60回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨」
第59回 「IFRSの誤解:IFRSは投資家にとっても役に立たない」
第58回 「米国基準を適用している企業の動き」
第57回 「グループ会計方針での重要性の判断規準」
第56回 「開発費の償却費は原価算入するべきか?」
第55回「闇に葬られてしまった有給休暇引当金問題」
第54回「金融商品としての売掛金の開示」
第53回「馬鹿に出来ない!?最初のIFRS財務諸表をアニュアルレポートで開示するメリット」
第52回「単体財務諸表へのIFRS任意適用の動き」
第51回「中田版『IFRSの誤解』 子会社の会計方針の統一」
第50回「組替仕訳の繰越手続き(開始仕訳)の考え方」
第49回「金融庁「IFRSに基づく連結財務諸表の開示例」の「留意事項」と「重要性の方針の開示例」」
第48回「定率法の採用を表現している企業の開示」
第47回「グループ法人税制が与える連結決算への影響 中小特例の取扱い」
第46回 グループ法人税制が与える連結決算への影響
「連結法人間の寄附金に係る税効果の会計手続き」

第45回 グループ法人税制が与える連結決算への影響「固定資産未実現に係る税効果の会計手続き」
第44回 「日本取引所(2015.03)の現金同等物の開示」
第43回 「HOYA(2015.03)の重要な会計方針の要約」
第42回 「丸紅の初度適用(短信からの初度適用)」
第41回 「改定されたIAS第1号「財務諸表の表示(開示イニシアチブ)」の
適用状況調査」

第40回 「連結決算短信での「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の記載状況」
第39回 「IFRS財団は日本の現状をどう見ているか」
第38回 「4つの会計基準収斂の方向性」
第37回 「IFRS適用の対応コスト」
第36回 「開示ボリュームを激減させる具体例」
第35回 「開発費資産計上の実態と分析」
第34回 「有給休暇引当金開示の実態と分析」
第33回 「注記情報の大幅削減が可能に!!」
第32回 「任意適用積み上げの動向と強制適用の可能性」
第31回 「膨大な注記への対応」
第30回 「さまざまなグループ会計方針書」
第29回 「IFRSでの勘定科目体系」
第28回 「影響度調査後のプロジェクト体制」
第27回 「グループ会計方針」
第26回 「影響度調査が終わったら」
第25回 「自民党・日本経済再生本部の「日本再生ビジョン」におけるIFRSの記載」
第24回 「影響度調査での重要性」
第23回 「IFRSの誤解:300万円ルールなどがないIFRSではすべてのリースがオンバランスになる」
第22回 「有給休暇引当金の対応事例」
第21回 「有給休暇引当金を計上しないケース」
第20回 「資本的支出後の減価償却資産の償却方法等」
第19回 「新指数『JPX日経インデックス400』はIFRS任意適用拡大に影響があるか」
第18回 「グループ会計方針」
第17回 「中国子会社の決算期ズレへの対応方法」
第16回 「IFRSの任意適用拡大に向けての経団連の期待と役割」
第15回 「日本企業をダメにする会計制度(第3弾) ~リース会計~」
第14回 「日本企業をダメにする会計制度(第2弾)~のれん~」
第13回 「J-IFRS(日本版IFRS)のねらい」
第12回 「日本企業をダメにする会計制度~開発費会計~」
第11回 「IFRS任意適用の動向」
第10回 「減損の兆候」
第9回 「外貨建取引の換算と個別会計システム」
第8回 「支払利息の原価算入」
第7回 「耐用年数変更の記載事例」
第6回 「減価償却方法変更の記載事例」
第5回 「定額法への減価償却方法の変更の動向」
第4回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応(その2)」
第3回 「現在の決算手続きに影響を与えかねない経済的耐用年数の決定」
第2回 「経済的耐用年数のあの手この手」
第1回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応」

著者プロフィール

中田 清穂(なかた せいほ)
青山監査法人にて米国基準での連結財務諸表監査に7年間従事。
旧PWCに転籍後、連結経営システム構築プロジェクト(約10社)に従事。
その他に経理業務改善プロジェクトや物流管理プロジェクトにて、現場業務の現状分析や改善提案に参画。
旧PWC退社後、DIVA社を設立し、取締役副社長に就任。DIVA社退社後、独立。