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中田清穂のIFRS徹底解説

第33回 「注記情報の大幅削減が可能に!!」

2014年12月18日、IASBは「開示イニシアティブ(IAS第1号の改訂)」を公表しました。

それが今回最終基準として「明確化」されたわけです。

明確化というのは、従来も同様の趣旨であったが、実際のIFRSの開示状況を見ると、重要性がない項目の開示で、注記が膨大になってしまっていることから、「本来の趣旨を明確に示す」というものです。

「IFRSを適用すると注記が膨大になる」という批判を受けた改訂だとも言われています。

この改訂は、IFRSベースの連結財務諸表を作成する上で、実務上、非常に重要な改訂だと思います。

特に、以下の項目が「明確化」されました。

1.重要でない情報を開示することで、重要な情報を埋没させては
  「ならない」
2.IFRSの個々の基準で開示を義務付ける規定があったとしても、
  規定に従った情報に重要性がなければ開示しては「ならない」
3.財務諸表本表についても、表示する勘定科目が列挙されているが、
  重要性がない勘定科目まで表示することを求めてはいない。

現在、日本ではIFRSを任意適用している企業が増加しています。

しかし、それらIFRS任意適用企業の有価証券報告書での開示内容を分析すると、重要性がないと思われる項目が少なくありません。

それは、IFRSの個々の基準で要求されていることを網羅しようとしていることと、他社で開示している事例があれば、それを取り込もうとしているからです。

今回のIAS第1号の改訂で、こういった実務は見直されなければなりません。

問題となるポイントは、自社の開示ひな型を作成して、会計監査人に見てもらったときです。

「この基準に開示要求があるので、開示が必須です」
とか、
「他社も同様の開示しているので開示すべきです」
などといったコメントを、会計監査人が依然としてしてくる可能性が大きいと思います。

そんな時には、今回のIAS第1号の改訂内容を「念のため」提示して、
「個別の要求規定や他社の開示事例があることは理解していますが、弊社にとっては重要性がないので、『開示してはならない』と理解しています。」
と返答することがとても大切になるでしょう。

ちなみに、このIAS第1号の適用時期は、2016年1月1日以降に開始する事業年度です。

しかし、「即時適用」が認められています。

なぜなら、従来の趣旨を「明確化」しただけだからです。



バックナンバー

最終回 「日本の会計基準とIFRSの「強制適用」」
第65回 「影響度調査の盲点」
第64回 「IFRS決算体制はいつから検討するか」
第63回 「IFRSの誤解:IFRSは時価会計的でM&Aのためにある」
第62回 「棚卸資産の評価とAging(長期滞留)」
第61回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨(その2)」
第60回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨」
第59回 「IFRSの誤解:IFRSは投資家にとっても役に立たない」
第58回 「米国基準を適用している企業の動き」
第57回 「グループ会計方針での重要性の判断規準」
第56回 「開発費の償却費は原価算入するべきか?」
第55回「闇に葬られてしまった有給休暇引当金問題」
第54回「金融商品としての売掛金の開示」
第53回「馬鹿に出来ない!?最初のIFRS財務諸表をアニュアルレポートで開示するメリット」
第52回「単体財務諸表へのIFRS任意適用の動き」
第51回「中田版『IFRSの誤解』 子会社の会計方針の統一」
第50回「組替仕訳の繰越手続き(開始仕訳)の考え方」
第49回「金融庁「IFRSに基づく連結財務諸表の開示例」の「留意事項」と「重要性の方針の開示例」」
第48回「定率法の採用を表現している企業の開示」
第47回「グループ法人税制が与える連結決算への影響 中小特例の取扱い」
第46回 グループ法人税制が与える連結決算への影響
「連結法人間の寄附金に係る税効果の会計手続き」

第45回 グループ法人税制が与える連結決算への影響「固定資産未実現に係る税効果の会計手続き」
第44回 「日本取引所(2015.03)の現金同等物の開示」
第43回 「HOYA(2015.03)の重要な会計方針の要約」
第42回 「丸紅の初度適用(短信からの初度適用)」
第41回 「改定されたIAS第1号「財務諸表の表示(開示イニシアチブ)」の
適用状況調査」

第40回 「連結決算短信での「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の記載状況」
第39回 「IFRS財団は日本の現状をどう見ているか」
第38回 「4つの会計基準収斂の方向性」
第37回 「IFRS適用の対応コスト」
第36回 「開示ボリュームを激減させる具体例」
第35回 「開発費資産計上の実態と分析」
第34回 「有給休暇引当金開示の実態と分析」
第33回 「注記情報の大幅削減が可能に!!」
第32回 「任意適用積み上げの動向と強制適用の可能性」
第31回 「膨大な注記への対応」
第30回 「さまざまなグループ会計方針書」
第29回 「IFRSでの勘定科目体系」
第28回 「影響度調査後のプロジェクト体制」
第27回 「グループ会計方針」
第26回 「影響度調査が終わったら」
第25回 「自民党・日本経済再生本部の「日本再生ビジョン」におけるIFRSの記載」
第24回 「影響度調査での重要性」
第23回 「IFRSの誤解:300万円ルールなどがないIFRSではすべてのリースがオンバランスになる」
第22回 「有給休暇引当金の対応事例」
第21回 「有給休暇引当金を計上しないケース」
第20回 「資本的支出後の減価償却資産の償却方法等」
第19回 「新指数『JPX日経インデックス400』はIFRS任意適用拡大に影響があるか」
第18回 「グループ会計方針」
第17回 「中国子会社の決算期ズレへの対応方法」
第16回 「IFRSの任意適用拡大に向けての経団連の期待と役割」
第15回 「日本企業をダメにする会計制度(第3弾) ~リース会計~」
第14回 「日本企業をダメにする会計制度(第2弾)~のれん~」
第13回 「J-IFRS(日本版IFRS)のねらい」
第12回 「日本企業をダメにする会計制度~開発費会計~」
第11回 「IFRS任意適用の動向」
第10回 「減損の兆候」
第9回 「外貨建取引の換算と個別会計システム」
第8回 「支払利息の原価算入」
第7回 「耐用年数変更の記載事例」
第6回 「減価償却方法変更の記載事例」
第5回 「定額法への減価償却方法の変更の動向」
第4回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応(その2)」
第3回 「現在の決算手続きに影響を与えかねない経済的耐用年数の決定」
第2回 「経済的耐用年数のあの手この手」
第1回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応」

著者プロフィール

中田 清穂(なかた せいほ)
青山監査法人にて米国基準での連結財務諸表監査に7年間従事。
旧PWCに転籍後、連結経営システム構築プロジェクト(約10社)に従事。
その他に経理業務改善プロジェクトや物流管理プロジェクトにて、現場業務の現状分析や改善提案に参画。
旧PWC退社後、DIVA社を設立し、取締役副社長に就任。DIVA社退社後、独立。