SSUGは会員の自己研鑽と相互の新睦を目的とする団体です。

中田清穂のIFRS徹底解説

第38回 「4つの会計基準収斂の方向性」

2015年6月3日、IASBのウェブサイトで、IFRS財団諮問会議(IFRS Advisory Council)の6月9日と10日の審議予定が公表されました。

このサイトを見ると、Agenda paperのNo.2に以下の項目があげられています。

“Agenda Paper 2: Overview of IFRS Adoption Report (Japan)”

これは、金融庁が作成した、日本におけるIFRSの任意適用の状況報告です。
そして、この審議項目に提出される資料の元になったのは、今年4月15日に金融庁から公表され、同日の企業会計審議会会計部会で全員から絶賛された「IFRS適用レポート」だと推定されます。

「IFRS適用レポート」は、日本においてIFRSの任意適用企業の拡大推進のために、金融庁自らがアンケート調査を行い、数十社に対しては、金融庁の審議官が直接インタビューに出向いて聞き取り調査を行った結果を加味して作成されたものです。

“Agenda Paper 2: Overview of IFRS Adoption Report (Japan)”での提出資料には、「IFRS適用レポート」に表現されていないページ(グラフ)があります。

それが以下のグラフです。



「IFRS適用レポート」には、全く触れられていない「米国基準の採用企業」の動向が表現されていますね。

このグラフを見ると、IFRSの任意適用企業は、19%まで上昇してきています。
日本基準採用企業は、67%と減少しています。
そして、米国基準採用企業も、3年前と比較して20%から15%へと、5%も減少しています。

金融庁はなぜこのグラフを作成したのでしょうか。
そして、なぜ、日本国内に向けた「IFRS適用レポート」にも記載しなかった情報を、IFRS財団の組織に向けて発表するのでしょうか。

私の考えでは、これはいずれ日本はIFRSが主流になるということを、「暗に」示したいのではないか、ということです。

日本基準はまだまだ、67%と圧倒的に主流ですが、折れ線グラフでの「推移」を見ると、減収傾向に拍車がかかりつつあるように見えます。

ここで、思い出されるのが、2013年6月に公表された「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(いわゆる「当面の方針」)です。

「当面の方針」では、
「エンドースメントされたIFRS」(現在最終化作業中の『修正国際基準(JMIS)』を開発することで、
日本には「四つの基準が並存する」ことになるが、
「4基準の並存状態は、大きな収斂の流れの中での一つのステップと位置付けることが適切である。」
とされていました。

「収斂」は何がどのように収斂するのか、具体的には明らかにはされませんでした。

それが、もうあれから2年近く経って、
今回の“Agenda Paper 2: Overview of IFRS Adoption Report (Japan)”での提出資料をながめながら、「収斂の方向性」に考えをはせてみたら、私には、IFRSに収斂していくように感じられます。

IFRS財団の方々は、これをどのように受けとめるでしょうか。

そしてこのコラムの読者のみなさんはどのように受けとめられますか?


【文中の参考資料のリンク】

金融庁が今年4月15日に公表した「IFRS適用レポート」は、以下のリンクから入手できます。
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/kaikei/20150415/01.pdf

IFRS財団諮問会議(IFRS Advisory Council)の6月の審議予定を知らせるサイトで、金融庁が作成した資料は、以下のサイトから入手できます。
http://www.ifrs.org/Meetings/Pages/IFRS-Advisory-Council-June-2015.aspx


バックナンバー

最終回 「日本の会計基準とIFRSの「強制適用」」
第65回 「影響度調査の盲点」
第64回 「IFRS決算体制はいつから検討するか」
第63回 「IFRSの誤解:IFRSは時価会計的でM&Aのためにある」
第62回 「棚卸資産の評価とAging(長期滞留)」
第61回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨(その2)」
第60回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨」
第59回 「IFRSの誤解:IFRSは投資家にとっても役に立たない」
第58回 「米国基準を適用している企業の動き」
第57回 「グループ会計方針での重要性の判断規準」
第56回 「開発費の償却費は原価算入するべきか?」
第55回「闇に葬られてしまった有給休暇引当金問題」
第54回「金融商品としての売掛金の開示」
第53回「馬鹿に出来ない!?最初のIFRS財務諸表をアニュアルレポートで開示するメリット」
第52回「単体財務諸表へのIFRS任意適用の動き」
第51回「中田版『IFRSの誤解』 子会社の会計方針の統一」
第50回「組替仕訳の繰越手続き(開始仕訳)の考え方」
第49回「金融庁「IFRSに基づく連結財務諸表の開示例」の「留意事項」と「重要性の方針の開示例」」
第48回「定率法の採用を表現している企業の開示」
第47回「グループ法人税制が与える連結決算への影響 中小特例の取扱い」
第46回 グループ法人税制が与える連結決算への影響
「連結法人間の寄附金に係る税効果の会計手続き」

第45回 グループ法人税制が与える連結決算への影響「固定資産未実現に係る税効果の会計手続き」
第44回 「日本取引所(2015.03)の現金同等物の開示」
第43回 「HOYA(2015.03)の重要な会計方針の要約」
第42回 「丸紅の初度適用(短信からの初度適用)」
第41回 「改定されたIAS第1号「財務諸表の表示(開示イニシアチブ)」の
適用状況調査」

第40回 「連結決算短信での「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の記載状況」
第39回 「IFRS財団は日本の現状をどう見ているか」
第38回 「4つの会計基準収斂の方向性」
第37回 「IFRS適用の対応コスト」
第36回 「開示ボリュームを激減させる具体例」
第35回 「開発費資産計上の実態と分析」
第34回 「有給休暇引当金開示の実態と分析」
第33回 「注記情報の大幅削減が可能に!!」
第32回 「任意適用積み上げの動向と強制適用の可能性」
第31回 「膨大な注記への対応」
第30回 「さまざまなグループ会計方針書」
第29回 「IFRSでの勘定科目体系」
第28回 「影響度調査後のプロジェクト体制」
第27回 「グループ会計方針」
第26回 「影響度調査が終わったら」
第25回 「自民党・日本経済再生本部の「日本再生ビジョン」におけるIFRSの記載」
第24回 「影響度調査での重要性」
第23回 「IFRSの誤解:300万円ルールなどがないIFRSではすべてのリースがオンバランスになる」
第22回 「有給休暇引当金の対応事例」
第21回 「有給休暇引当金を計上しないケース」
第20回 「資本的支出後の減価償却資産の償却方法等」
第19回 「新指数『JPX日経インデックス400』はIFRS任意適用拡大に影響があるか」
第18回 「グループ会計方針」
第17回 「中国子会社の決算期ズレへの対応方法」
第16回 「IFRSの任意適用拡大に向けての経団連の期待と役割」
第15回 「日本企業をダメにする会計制度(第3弾) ~リース会計~」
第14回 「日本企業をダメにする会計制度(第2弾)~のれん~」
第13回 「J-IFRS(日本版IFRS)のねらい」
第12回 「日本企業をダメにする会計制度~開発費会計~」
第11回 「IFRS任意適用の動向」
第10回 「減損の兆候」
第9回 「外貨建取引の換算と個別会計システム」
第8回 「支払利息の原価算入」
第7回 「耐用年数変更の記載事例」
第6回 「減価償却方法変更の記載事例」
第5回 「定額法への減価償却方法の変更の動向」
第4回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応(その2)」
第3回 「現在の決算手続きに影響を与えかねない経済的耐用年数の決定」
第2回 「経済的耐用年数のあの手この手」
第1回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応」

著者プロフィール

中田 清穂(なかた せいほ)
青山監査法人にて米国基準での連結財務諸表監査に7年間従事。
旧PWCに転籍後、連結経営システム構築プロジェクト(約10社)に従事。
その他に経理業務改善プロジェクトや物流管理プロジェクトにて、現場業務の現状分析や改善提案に参画。
旧PWC退社後、DIVA社を設立し、取締役副社長に就任。DIVA社退社後、独立。