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中田清穂のIFRS徹底解説

第43回 「HOYA(2015.03)の重要な会計方針の要約」

今回は、IFRSを任意適用している企業が、実際にIFRSベースで開示している事例を研究し、今後のIFRSベースの開示に役立てればと考えています。

まず今回は、IFRSの開示について、昨年末に改訂されたIAS第1号「財務諸表の表示」の改訂内容を早期適用しているかどうかをウォッチしたいと思います。

2014年12月18日、IASBが「開示イニシアティブ(IAS第1号の改訂)」を公表し、開示ボリュームが激減できることになったことは、以下のコラムでもご紹介しました。

コラム 第33回 「注記情報の大幅削減が可能に!!」
コラム 第36回 「開示ボリュームを激減させる具体例」

このIAS第1号の適用時期は、2016年1月1日以降に開始する事業年度です。

しかし、「即時適用」が認められています。

企業によって事情があるので、一概にはいえませんが、私の感覚では、企業が財務諸表を作成する現場では、開示内容を削減することは、決算に係るコストを削減し、ミスも削減できるので、早期適用が認められるのであれば、躊躇することなく早期適用するのが合理的だろうと思います。

さて、今回は、IFRSを適用している3月決算の企業のトップバッターとして、6月4日に有価証券報告書を提出したHOYAを取りあげたいと思います。

HOYAの有価証券報告書の84ページ目を見ると、以下の開示があります。

IFRS
強制適用時期
(~移行開始年度)
当社グループ適用時期 新設・改訂の内容
IAS第1号 財務諸表の表示 平成28年1月1日~ 平成29年3月期 ・開示イニシアティブにより、以下を明確化
・重要性及び集約:情報の集約/分解により有用な情報を不明瞭にするべきでないこと、及び情報に重要性がある場合のみ、IFRSで具体的に要求される開示を提供するべきであること
・財政状態計算書ならびに純損益及びその他の包括利益計算書:IAS第1号で特定されている表示項目のリストは関連性があれば分解または集約できる。財務諸表における小計の表示について、ガイダンスの追加
・その他の包括利益(OCI)項目の表示:持分法で会計処理する関連会社及び共同支配企業のOCIに対する企業の持分は、その後の純損益への振替がなされるかどうかに基づいて、単一の表示項目として集約して表示すべきであること
・注記:注記の構成について、財務諸表の理解可能性及び比較可能性を考慮すべきであること

HOYAは、「開示イニシアティブ(IAS第1号の改訂)」の早期適用をしなかったということです。

「新設・改訂の内容」の3行目後半を見ると以下の記載があります。

「情報に重要性がある場合のみ、IFRSで具体的に要求される開示を提供すべきであること」

すなわち、早期適用をしなかったということは、今回の有価証券報告書では、重要性がない場合も開示したものがありうるということです。

結果的に、投資家等の利用者の意思決定に不要な情報を記載することで、重要な情報が見えにくくなったまま放置してしまっているということなのです。

今後提出を予定している企業の有価証券報告書も、このような観点でウォッチしていきたいと思います。


バックナンバー

最終回 「日本の会計基準とIFRSの「強制適用」」
第65回 「影響度調査の盲点」
第64回 「IFRS決算体制はいつから検討するか」
第63回 「IFRSの誤解:IFRSは時価会計的でM&Aのためにある」
第62回 「棚卸資産の評価とAging(長期滞留)」
第61回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨(その2)」
第60回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨」
第59回 「IFRSの誤解:IFRSは投資家にとっても役に立たない」
第58回 「米国基準を適用している企業の動き」
第57回 「グループ会計方針での重要性の判断規準」
第56回 「開発費の償却費は原価算入するべきか?」
第55回「闇に葬られてしまった有給休暇引当金問題」
第54回「金融商品としての売掛金の開示」
第53回「馬鹿に出来ない!?最初のIFRS財務諸表をアニュアルレポートで開示するメリット」
第52回「単体財務諸表へのIFRS任意適用の動き」
第51回「中田版『IFRSの誤解』 子会社の会計方針の統一」
第50回「組替仕訳の繰越手続き(開始仕訳)の考え方」
第49回「金融庁「IFRSに基づく連結財務諸表の開示例」の「留意事項」と「重要性の方針の開示例」」
第48回「定率法の採用を表現している企業の開示」
第47回「グループ法人税制が与える連結決算への影響 中小特例の取扱い」
第46回 グループ法人税制が与える連結決算への影響
「連結法人間の寄附金に係る税効果の会計手続き」

第45回 グループ法人税制が与える連結決算への影響「固定資産未実現に係る税効果の会計手続き」
第44回 「日本取引所(2015.03)の現金同等物の開示」
第43回 「HOYA(2015.03)の重要な会計方針の要約」
第42回 「丸紅の初度適用(短信からの初度適用)」
第41回 「改定されたIAS第1号「財務諸表の表示(開示イニシアチブ)」の
適用状況調査」

第40回 「連結決算短信での「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の記載状況」
第39回 「IFRS財団は日本の現状をどう見ているか」
第38回 「4つの会計基準収斂の方向性」
第37回 「IFRS適用の対応コスト」
第36回 「開示ボリュームを激減させる具体例」
第35回 「開発費資産計上の実態と分析」
第34回 「有給休暇引当金開示の実態と分析」
第33回 「注記情報の大幅削減が可能に!!」
第32回 「任意適用積み上げの動向と強制適用の可能性」
第31回 「膨大な注記への対応」
第30回 「さまざまなグループ会計方針書」
第29回 「IFRSでの勘定科目体系」
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第27回 「グループ会計方針」
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第16回 「IFRSの任意適用拡大に向けての経団連の期待と役割」
第15回 「日本企業をダメにする会計制度(第3弾) ~リース会計~」
第14回 「日本企業をダメにする会計制度(第2弾)~のれん~」
第13回 「J-IFRS(日本版IFRS)のねらい」
第12回 「日本企業をダメにする会計制度~開発費会計~」
第11回 「IFRS任意適用の動向」
第10回 「減損の兆候」
第9回 「外貨建取引の換算と個別会計システム」
第8回 「支払利息の原価算入」
第7回 「耐用年数変更の記載事例」
第6回 「減価償却方法変更の記載事例」
第5回 「定額法への減価償却方法の変更の動向」
第4回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応(その2)」
第3回 「現在の決算手続きに影響を与えかねない経済的耐用年数の決定」
第2回 「経済的耐用年数のあの手この手」
第1回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応」

著者プロフィール

中田 清穂(なかた せいほ)
青山監査法人にて米国基準での連結財務諸表監査に7年間従事。
旧PWCに転籍後、連結経営システム構築プロジェクト(約10社)に従事。
その他に経理業務改善プロジェクトや物流管理プロジェクトにて、現場業務の現状分析や改善提案に参画。
旧PWC退社後、DIVA社を設立し、取締役副社長に就任。DIVA社退社後、独立。