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中田清穂のIFRS徹底解説

第44回 「日本取引所(2015.03)の現金同等物の開示」

今回もIFRSの開示について、昨年末に改訂されたIAS第1号「財務諸表の表示」の改訂内容を早期適用しているかどうかをウォッチしたいと思います。

このIAS第1号の適用時期は、2016年1月1日以降に開始する事業年度ですが、「即時適用」が認められています。

さて、今回は、IFRSを2015年3月期から適用している日本取引所グループ(以下JPX)を取りあげたいと思います。

JPXの有価証券報告書の79ページ目を見ると、以下の開示があります。

(5)新基準の早期適用
当社グループはIFRS第9号「金融商品」(2010年10月改訂)(以下、「IFRS第9号(2010年版)」という。)を移行日(2013年4月1日)より早期適用しております。
IFRS第9号(2010年版)は、IAS第39号「金融商品:認識及び測定」(以下、「IAS第39号」という。)を置き換えるものであり、金融商品に償却原価と公正価値の2つの測定区分を採用しております。公正価値で測定される金融資産に係る公正価値の変動は損益で認識することとなっております。ただし、売買目的ではない資本性金融商品への投資については、当初認識時に、その公正価値の事後的な変動をその他の包括利益として認識するという取消不能な選択を行うことが認められております。

つまりここには、「開示イニシアティブ(IAS第1号の改訂)」の早期適用した旨の記載がありません。

それでは早期適用していないことはきちんと書いてあるのかを確認するために、86ページ目の「未適用の新基準書」を見ると、以下の開示があります。

ここにも、「開示イニシアティブ(IAS第1号の改訂)」は、「連結財務諸表の承認日までに新設又は改訂が行われた新基準書」に該当するはずですが、これには全く触れられていません。

つまり、改訂された基準書を早期適用したのかどうか全く記載していないのです。

これでは、前回のHOYAの方がまだましです。

さらに、ざっと目を通して目を引いたのが、今回のタイトルにもしている「現金及び現金同等物」です。

89ページ目に開示されています。

実際の開示内容は以下です。


このような注記は全く意味がないと思います。
この情報を開示することで、投資家を始めとする財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えるとは到底思えません。

これは「重要性のない情報の開示」の典型的な例でしょう。

JPXの注記には、このような開示がたくさん見受けられます。

前回のHOYAについても記載しましたが、
「結果的に、投資家等の利用者の意思決定に不要な情報を記載することで、重要な情報を見えにくくしてしまっている
のです。

2014年12月18日、IASBが「開示イニシアティブ(IAS第1号の改訂)」を公表し、開示ボリュームが激減できることになったことに関しては、これまで、以下のコラムでご紹介しました。
こちらも参考にしてください。

第33回 「注記情報の大幅削減が可能に!!」
第36回 「開示ボリュームを激減させる具体例」

バックナンバー

最終回 「日本の会計基準とIFRSの「強制適用」」
第65回 「影響度調査の盲点」
第64回 「IFRS決算体制はいつから検討するか」
第63回 「IFRSの誤解:IFRSは時価会計的でM&Aのためにある」
第62回 「棚卸資産の評価とAging(長期滞留)」
第61回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨(その2)」
第60回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨」
第59回 「IFRSの誤解:IFRSは投資家にとっても役に立たない」
第58回 「米国基準を適用している企業の動き」
第57回 「グループ会計方針での重要性の判断規準」
第56回 「開発費の償却費は原価算入するべきか?」
第55回「闇に葬られてしまった有給休暇引当金問題」
第54回「金融商品としての売掛金の開示」
第53回「馬鹿に出来ない!?最初のIFRS財務諸表をアニュアルレポートで開示するメリット」
第52回「単体財務諸表へのIFRS任意適用の動き」
第51回「中田版『IFRSの誤解』 子会社の会計方針の統一」
第50回「組替仕訳の繰越手続き(開始仕訳)の考え方」
第49回「金融庁「IFRSに基づく連結財務諸表の開示例」の「留意事項」と「重要性の方針の開示例」」
第48回「定率法の採用を表現している企業の開示」
第47回「グループ法人税制が与える連結決算への影響 中小特例の取扱い」
第46回 グループ法人税制が与える連結決算への影響
「連結法人間の寄附金に係る税効果の会計手続き」

第45回 グループ法人税制が与える連結決算への影響「固定資産未実現に係る税効果の会計手続き」
第44回 「日本取引所(2015.03)の現金同等物の開示」
第43回 「HOYA(2015.03)の重要な会計方針の要約」
第42回 「丸紅の初度適用(短信からの初度適用)」
第41回 「改定されたIAS第1号「財務諸表の表示(開示イニシアチブ)」の
適用状況調査」

第40回 「連結決算短信での「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の記載状況」
第39回 「IFRS財団は日本の現状をどう見ているか」
第38回 「4つの会計基準収斂の方向性」
第37回 「IFRS適用の対応コスト」
第36回 「開示ボリュームを激減させる具体例」
第35回 「開発費資産計上の実態と分析」
第34回 「有給休暇引当金開示の実態と分析」
第33回 「注記情報の大幅削減が可能に!!」
第32回 「任意適用積み上げの動向と強制適用の可能性」
第31回 「膨大な注記への対応」
第30回 「さまざまなグループ会計方針書」
第29回 「IFRSでの勘定科目体系」
第28回 「影響度調査後のプロジェクト体制」
第27回 「グループ会計方針」
第26回 「影響度調査が終わったら」
第25回 「自民党・日本経済再生本部の「日本再生ビジョン」におけるIFRSの記載」
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第23回 「IFRSの誤解:300万円ルールなどがないIFRSではすべてのリースがオンバランスになる」
第22回 「有給休暇引当金の対応事例」
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第20回 「資本的支出後の減価償却資産の償却方法等」
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第18回 「グループ会計方針」
第17回 「中国子会社の決算期ズレへの対応方法」
第16回 「IFRSの任意適用拡大に向けての経団連の期待と役割」
第15回 「日本企業をダメにする会計制度(第3弾) ~リース会計~」
第14回 「日本企業をダメにする会計制度(第2弾)~のれん~」
第13回 「J-IFRS(日本版IFRS)のねらい」
第12回 「日本企業をダメにする会計制度~開発費会計~」
第11回 「IFRS任意適用の動向」
第10回 「減損の兆候」
第9回 「外貨建取引の換算と個別会計システム」
第8回 「支払利息の原価算入」
第7回 「耐用年数変更の記載事例」
第6回 「減価償却方法変更の記載事例」
第5回 「定額法への減価償却方法の変更の動向」
第4回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応(その2)」
第3回 「現在の決算手続きに影響を与えかねない経済的耐用年数の決定」
第2回 「経済的耐用年数のあの手この手」
第1回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応」

著者プロフィール

中田 清穂(なかた せいほ)
青山監査法人にて米国基準での連結財務諸表監査に7年間従事。
旧PWCに転籍後、連結経営システム構築プロジェクト(約10社)に従事。
その他に経理業務改善プロジェクトや物流管理プロジェクトにて、現場業務の現状分析や改善提案に参画。
旧PWC退社後、DIVA社を設立し、取締役副社長に就任。DIVA社退社後、独立。