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中田清穂のIFRS徹底解説

第48回「定率法の採用を表現している企業の開示」

有形固定資産の減価償却方法について、IFRSでは「定率法」は認められず、「定額法」にしなければならないと思い込まれているようです。

しかし、IAS第16号「有形固定資産」62項では、以下のように、「定額法」も「定率法」も同等に扱われています。

さまざまな減価償却方法が、資産の償却可能額を耐用年数にわたって原則的に配分するために、用いられる可能性がある。こうした方法には、定額法、定率法及び生産高比例方が含まれる。

さらに、IFRS財団は2010年11月19日に、教育文書として、「減価償却とIFRS(Depreciation and IFRS)」を公表しました。

この教育文書は、Wayne Upton氏(IASB国際活動担当ディレクター、当時)が、IAS第16号「有形固定資産」に従った会計処理を行うために必要とされる、いくつかの見積りと判断について説明している、とされているものです。
したがって、IFRSの基準のような強制力はありませんし、IASBの公式見解でもありません。
しかし、IASBのディレクターがIFRS財団のサイトで公表したものですから、実務上参考にすることは問題ないと考えられています。

この教育文書の仮訳の6ページ目を以下に引用します。

IAS第16号において、定額法は他の方法よりも優先されるのだろうか。この点についても、私はそうは思わない。定額法は、反証がない限り、管理するのにも財務諸表の利用者が理解するのにも最も容易であるかもしれない。これらの要因により、定額法は最も容易な方法となっているが、必ずしも優先される方法だとは限らない。

この教育文書を根拠に、日本の会計慣行として「定率法」を採用してきた企業は、IFRSを採用する場合でも、「定率法」を採用できる可能性が明らかです。

しかし、IFRSを適用している企業の、2014年12月期から2015年11月期までの有価証券報告書を調査してみると、「定率法」に関して記載があるのは、以下の3社しかありませんでした。

1. ダイナムジャパンホールディングス
2. トーセイ
3. 三菱商事

1のダイナムジャパンホールディングスは非上場企業です。

2のトーセイは、「定率法」に触れてはいるものの、以下に示すように、少し微妙な表現です。

土地及び建設仮勘定以外の資産の減価償却は、以下の見積耐用年数にわたり、主として定額法により計算しております。また、定率法による減価償却が、当該資産から生じる将来の経済的便益が消費されるパターンをより良く羽いする場合には、定率法を採用しております。

もしかしたら、実際に「定率法」で減価償却をしている資産はないのかもしれません。

3の三菱商事の記載は以下です。

鉱物資源関連資産以外の有形固定資産の減価償却は、各資産の見積耐用年数に基づき、主として建物及び構造物は定額法、機械及び装置は定額法又は定率法、航空機及び船舶は定額法によって算出しています。

上記3社以外は、すべて「定額法」のみです。

なお新日鐵住金と三菱重工業は、まだIFRSを適用していませんし、IFRSの任意適用を正式に表明していませんが、定率法を採用することを、『企業会計』(中央経済社)の座談会で触れていました。

これら、日本の会計制度に深く関与している企業が「定率法」を採用し始めると、流れが変わるかもしれません。

IFRS財団が2010年11月19日に公表した、教育文書「減価償却とIFRS(Depreciation and IFRS)」の仮訳は、以下のサイトから参照してください。

https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/iasb/others/20101203.jsp

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第62回 「棚卸資産の評価とAging(長期滞留)」
第61回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨(その2)」
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第5回 「定額法への減価償却方法の変更の動向」
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第3回 「現在の決算手続きに影響を与えかねない経済的耐用年数の決定」
第2回 「経済的耐用年数のあの手この手」
第1回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応」

著者プロフィール

中田 清穂(なかた せいほ)
青山監査法人にて米国基準での連結財務諸表監査に7年間従事。
旧PWCに転籍後、連結経営システム構築プロジェクト(約10社)に従事。
その他に経理業務改善プロジェクトや物流管理プロジェクトにて、現場業務の現状分析や改善提案に参画。
旧PWC退社後、DIVA社を設立し、取締役副社長に就任。DIVA社退社後、独立。