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中田清穂のIFRS徹底解説

第49回「金融庁「IFRSに基づく連結財務諸表の開示例」の「留意事項」と「重要性の方針の開示例」」

金融庁は、平成21年12月に「国際会計基準に基づく連結財務諸表の開示例」を公表しました。

その後6年あまりも放置され、全く改定・更新が行われていませんでした。

しかし、平成28年3月31日、「国際会計基準に基づく連結財務諸表の開示例」を改訂し、「IFRSに基づく連結財務諸表の開示例(以下、「開示例」という。)」として取りまとめました。

「開示例」の作成は外部に委託されましたが、最終的には、FASF(公益財団法人財務会計基準機構)が落札したものです。

つまり、今回の「開示例」は、FASFが作成したものです。
ちなみに、FASFは、ご存じの通り、企業会計基準委員会(ASBJ)の運営母体です。

さて、本「週刊中田」でも再三取り上げてきた、IFRS開示のあり方について、金融庁から久しぶりに「開示例」が公表されたことから、これまでの私の主張とこの「開示例」がどのような異同があるのかを見ていきたいと思います。

まずは、「開示イニシアチブ」です。

特に、

開示ボリュームを激減させる具体例(第36回)
https://www.superstream.jp/jp/column/tettei/vol_036/

では、以下のように指摘していました。

(「IFRS実務記述書─財務諸表への重要性の適用」は)
日本では、金融庁が追加的に要求して初めて強制力が発生すると理解できます。

金融庁が追加的要求をするかどうかはまだわかりませんが、重要なことは本資料にある「実務記述書(案)」の内容です。

内容のほとんどは「開示イニシアティブ(IAS第1号の改訂)」での改訂内容を丁寧にわかりやすく解説したものだという印象です。

その中でも「わが意を得たり!!」と感じたのは、20ページ目にある第55項の表現です。

第55項は、「重要性がない情報」という見出しの中にあります。
そして、重要性がない情報の開示で重要な情報の理解を妨げる一例として、会計方針の開示を挙げています。

つまり、IFRS財団が実務記述書の中で明示した「重要性がないので開示すべきでない情報」として、「会計方針の開示」があげられていて、金融庁もそれを認めるかどうかがポイントだということでした。

今回の「開示例」を見ると、まず、4ページ目に、「IFRSの開示規定を適用する際の留意事項(IAS第1号の改訂概要)」として、「開示イニシアチブ」の内容がそっくりそのまま記載されています。

また、「開示例」の25ページ目には、「重要な会計方針」が示されていますが、以下の項目については、見出しのみで、全く開示例が表現されていません。
(2)企業結合
(3)外貨換算
(7)売却目的で保有する資産
(10)リース
(12)非金融資産の減損
(13)従業員給付
(14)株式報酬
(15)引当金
(16)資本金

また、「(8)有形固定資産」を見てみると、日本のIFRS先行適用企業がことごとく開示してきた、いわゆる「借入費用の資産化」や「不動産取得税の取得原価参入」などについての開示はありません。

これらは、選択適用や企業の判断が介入する余地がなく、すべてのIFRS適用企業にとって、準拠する以外ないものだからでしょう。

したがって、日本企業においても、自信をもって「開示イニシアチブ」を適用し、まずは、「重要な会計方針」の記載をバッサリ削減することができるでしょう。

ちなみに、開示イニシアチブ(IAS第1号「財務諸表の表示」の改訂)は、2016年1月1日に開始する事業年度から強制適用ですが、すでに早期適用が認められています。

経理部門の工数を削減するのであれば、積極的に早期適用を検討するべきでしょう。

金融庁が平成28年3月31日に公表した、「IFRSに基づく連結財務諸表の開示例」は、以下のサイトからダウンロードできます。
http://www.fsa.go.jp/news/27/sonota/20160331-5.html

また、これまで、本コラムでは「開示イニシアチブ」を以下のように取り上げてきましたので、参考にしてください。

注記情報の大幅削減が可能に!!(第33回)
https://www.superstream.jp/jp/column/tettei/vol_033/

開示ボリュームを激減させる具体例(第36回)
https://www.superstream.jp/jp/column/tettei/vol_036/

HOYA(2015.03)の重要な会計方針の要約(第43回)
https://www.superstream.jp/jp/column/tettei/vol_043/

日本取引所(2015.03)の現金同等物の開示(第44回)
https://www.superstream.jp/jp/column/tettei/vol_044/

改定されたIAS第1号「財務諸表の表示」(開示イニシアチブ)の適用状況調査(第41回)
https://www.superstream.jp/jp/column/tettei/vol_041/



バックナンバー

最終回 「日本の会計基準とIFRSの「強制適用」」
第65回 「影響度調査の盲点」
第64回 「IFRS決算体制はいつから検討するか」
第63回 「IFRSの誤解:IFRSは時価会計的でM&Aのためにある」
第62回 「棚卸資産の評価とAging(長期滞留)」
第61回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨(その2)」
第60回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨」
第59回 「IFRSの誤解:IFRSは投資家にとっても役に立たない」
第58回 「米国基準を適用している企業の動き」
第57回 「グループ会計方針での重要性の判断規準」
第56回 「開発費の償却費は原価算入するべきか?」
第55回「闇に葬られてしまった有給休暇引当金問題」
第54回「金融商品としての売掛金の開示」
第53回「馬鹿に出来ない!?最初のIFRS財務諸表をアニュアルレポートで開示するメリット」
第52回「単体財務諸表へのIFRS任意適用の動き」
第51回「中田版『IFRSの誤解』 子会社の会計方針の統一」
第50回「組替仕訳の繰越手続き(開始仕訳)の考え方」
第49回「金融庁「IFRSに基づく連結財務諸表の開示例」の「留意事項」と「重要性の方針の開示例」」
第48回「定率法の採用を表現している企業の開示」
第47回「グループ法人税制が与える連結決算への影響 中小特例の取扱い」
第46回 グループ法人税制が与える連結決算への影響
「連結法人間の寄附金に係る税効果の会計手続き」

第45回 グループ法人税制が与える連結決算への影響「固定資産未実現に係る税効果の会計手続き」
第44回 「日本取引所(2015.03)の現金同等物の開示」
第43回 「HOYA(2015.03)の重要な会計方針の要約」
第42回 「丸紅の初度適用(短信からの初度適用)」
第41回 「改定されたIAS第1号「財務諸表の表示(開示イニシアチブ)」の
適用状況調査」

第40回 「連結決算短信での「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の記載状況」
第39回 「IFRS財団は日本の現状をどう見ているか」
第38回 「4つの会計基準収斂の方向性」
第37回 「IFRS適用の対応コスト」
第36回 「開示ボリュームを激減させる具体例」
第35回 「開発費資産計上の実態と分析」
第34回 「有給休暇引当金開示の実態と分析」
第33回 「注記情報の大幅削減が可能に!!」
第32回 「任意適用積み上げの動向と強制適用の可能性」
第31回 「膨大な注記への対応」
第30回 「さまざまなグループ会計方針書」
第29回 「IFRSでの勘定科目体系」
第28回 「影響度調査後のプロジェクト体制」
第27回 「グループ会計方針」
第26回 「影響度調査が終わったら」
第25回 「自民党・日本経済再生本部の「日本再生ビジョン」におけるIFRSの記載」
第24回 「影響度調査での重要性」
第23回 「IFRSの誤解:300万円ルールなどがないIFRSではすべてのリースがオンバランスになる」
第22回 「有給休暇引当金の対応事例」
第21回 「有給休暇引当金を計上しないケース」
第20回 「資本的支出後の減価償却資産の償却方法等」
第19回 「新指数『JPX日経インデックス400』はIFRS任意適用拡大に影響があるか」
第18回 「グループ会計方針」
第17回 「中国子会社の決算期ズレへの対応方法」
第16回 「IFRSの任意適用拡大に向けての経団連の期待と役割」
第15回 「日本企業をダメにする会計制度(第3弾) ~リース会計~」
第14回 「日本企業をダメにする会計制度(第2弾)~のれん~」
第13回 「J-IFRS(日本版IFRS)のねらい」
第12回 「日本企業をダメにする会計制度~開発費会計~」
第11回 「IFRS任意適用の動向」
第10回 「減損の兆候」
第9回 「外貨建取引の換算と個別会計システム」
第8回 「支払利息の原価算入」
第7回 「耐用年数変更の記載事例」
第6回 「減価償却方法変更の記載事例」
第5回 「定額法への減価償却方法の変更の動向」
第4回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応(その2)」
第3回 「現在の決算手続きに影響を与えかねない経済的耐用年数の決定」
第2回 「経済的耐用年数のあの手この手」
第1回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応」

著者プロフィール

中田 清穂(なかた せいほ)
青山監査法人にて米国基準での連結財務諸表監査に7年間従事。
旧PWCに転籍後、連結経営システム構築プロジェクト(約10社)に従事。
その他に経理業務改善プロジェクトや物流管理プロジェクトにて、現場業務の現状分析や改善提案に参画。
旧PWC退社後、DIVA社を設立し、取締役副社長に就任。DIVA社退社後、独立。