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中田清穂のIFRS徹底解説

第51回「中田版『IFRSの誤解』 子会社の会計方針の統一」

【誤 解】
子会社は、グループ全体で統一されたグループ・アカウンティング・ポリシーにすべて準拠しなければならない。
  
【実 際】
子会社は、グループ全体で統一されたグループ・アカウンティング・ポリシーに準拠しない方が良い場合もある。

IFRSを連結ベースで適用する際に、実務上大きな課題となるのが、グループ・アカウンティング・ポリシーの統一的な展開です。
一般的に、連結対象となる子会社や持分法適用となる持分法適用関連会社は、すべて統一されたグループ・アカウンティング・ポリシーに準拠して、各社の個別財務諸表を作成する必要があると言われています。

しかし、以下の2つのケースでは、統一されたグループ・アカウンティング・ポリシーに準拠する必要はなく、逆に従来の会計処理のまま変えない方が良いと思われます。

① 当該子会社や関連会社に重要性がない場合
② 取引が親会社や他の連結対象子会社との取引に関するものである場合

以下、上記2つのケースについて説明します。

① 当該子会社や関連会社に重要性がない場合
子会社や関連会社の重要性については、いくつかの段階に分けて整理して考えることが重要でしょう。
その「段階」とは、「(a)連結範囲の検討段階」と「(b)個別財務諸表の取込(合算)の段階」と「(c)連結消去仕訳の段階」の3つです。

(a) 連結範囲の検討段階
まず、IFRSではすべての子会社を連結する必要はありますが、「中田版『IFRSの誤解』Part2:連結の範囲」で説明した通り、重要性のない子会社はそもそも連結する必要はありません。

(b) 個別財務諸表の取込(合算)の段階
しかし、連結対象から外すほど重要性が低いわけではないので、連結範囲に含めることとなっても、従来の会計処理で個別財務諸表を作成した場合と、IFRSベースによる会計処理で個別財務諸表を作成した場合で、グループ全体としての連結財務諸表には重要な影響を及ぼさない場合もあるいでしょう。
このような場合には、連結対象にはするものの、IFRSを厳密に適用させる必要はなく、当該子会社の従来の会計処理のベースで個別財務諸表を作成してもらい、その個別財務諸表を取り込む(合算する)だけで良いでしょう。
つまり、合算はするけれど、厳密にIFRSを適用したものにはしないのです。

(c) 連結消去仕訳の段階
(b)で、合算はするけれど厳密にIFRSを適用したものにはしないような場合には、少し乱暴ですが、連結消去仕訳としては、投資と資本の消去仕訳のみ行い、その他の連結消去仕訳(債権債務消去、損益取引消去や未実現損益消去など)は一切やらなくても良いのではないかと思います。

② 取引が親会社や他の連結対象子会社との取引に関するものである場合
統一されたグループ・アカウンティング・ポリシーを適用すると、従来の会計処理とは異なる会計処理をする必要がある場合があります。
例えば、
IFRS15『顧客との契約から生じる収益』における「代理人」としての取引にあたる場合には、手数料部分のみの収益計上となり、仕入と売上の両建て計上ができなくなります。
この「代理人」とみなされるケースとしては、販売子会社のケースが多いと思われます。
販売子会社の活動としては受注活動がメインであり、在庫リスクもなく、販売価格も親会社が決定するような場合です。

しかし、当該販売子会社の製品仕入が親会社や他の連結対象子会社である場合には、最終的には連結手続の損益取引の消去仕訳で、消去対象となるので、販売子会社の個別財務諸表において、厳密にIFRSを適用する意味はありません。

それどころか、連結手続で損益取引の消去仕訳を作成する際に、販売側の収益計上額と購入側の手数料計上金額でうまく照合ができず、かえって連結手続が手間取ることになります。

したがって、このように最終的には連結手続で消去されるケースでは、統一されたグループ・アカウンティング・ポリシーを適用せず、従来通りの会計処理で仕入と売上の両建て計上を行い、連結手続で損益取引の消去仕訳を行うことで良いと思います。

バックナンバー

最終回 「日本の会計基準とIFRSの「強制適用」」
第65回 「影響度調査の盲点」
第64回 「IFRS決算体制はいつから検討するか」
第63回 「IFRSの誤解:IFRSは時価会計的でM&Aのためにある」
第62回 「棚卸資産の評価とAging(長期滞留)」
第61回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨(その2)」
第60回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨」
第59回 「IFRSの誤解:IFRSは投資家にとっても役に立たない」
第58回 「米国基準を適用している企業の動き」
第57回 「グループ会計方針での重要性の判断規準」
第56回 「開発費の償却費は原価算入するべきか?」
第55回「闇に葬られてしまった有給休暇引当金問題」
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第52回「単体財務諸表へのIFRS任意適用の動き」
第51回「中田版『IFRSの誤解』 子会社の会計方針の統一」
第50回「組替仕訳の繰越手続き(開始仕訳)の考え方」
第49回「金融庁「IFRSに基づく連結財務諸表の開示例」の「留意事項」と「重要性の方針の開示例」」
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第14回 「日本企業をダメにする会計制度(第2弾)~のれん~」
第13回 「J-IFRS(日本版IFRS)のねらい」
第12回 「日本企業をダメにする会計制度~開発費会計~」
第11回 「IFRS任意適用の動向」
第10回 「減損の兆候」
第9回 「外貨建取引の換算と個別会計システム」
第8回 「支払利息の原価算入」
第7回 「耐用年数変更の記載事例」
第6回 「減価償却方法変更の記載事例」
第5回 「定額法への減価償却方法の変更の動向」
第4回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応(その2)」
第3回 「現在の決算手続きに影響を与えかねない経済的耐用年数の決定」
第2回 「経済的耐用年数のあの手この手」
第1回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応」

著者プロフィール

中田 清穂(なかた せいほ)
青山監査法人にて米国基準での連結財務諸表監査に7年間従事。
旧PWCに転籍後、連結経営システム構築プロジェクト(約10社)に従事。
その他に経理業務改善プロジェクトや物流管理プロジェクトにて、現場業務の現状分析や改善提案に参画。
旧PWC退社後、DIVA社を設立し、取締役副社長に就任。DIVA社退社後、独立。