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中田清穂のIFRS徹底解説

第57回 「グループ会計方針での重要性の判断規準」

グループ会計方針を作成する上で、重要性の判断規準について、どのように進めるのか、どのように取り扱うのかが、問題になります。

監査法人主導のプロジェクトでは、後回しになりがちです。
重要かどうかは、決算の都度判断したいからです。

しかし、IFRSは『原則主義』なので、重要性の判断規準に関する明文規定や実務指針はほとんどありません。したがって、グループ会計方針として、自社のための重要性の判断規準を定めておく必要があります。
そうしないと、決算の都度、会計監査人の判断に振り回されることになるのです。
特に、会計監査人は、自らの責任をできるだけ回避できるようにするために、重要性の判断規準を厳しくしたがるでしょう。これが、『厳格主義』につながるのです。

企業が自社のための重要性の判断規準を確立することは、『厳格主義』に対抗する上で、非常に重要な意味を持つのです。

それでは、企業が自社のための重要性の判断規準を確立するためには、どのようなアプローチがあるでしょうか。つまり、重要性の判断規準をどうやって策定すれば良いかということです。
このアプローチには、以下の2つがあります。(いずれも中田による造語)

1.従来規定引用アプローチ
2.独自規定創造アプローチ


1.従来規定引用アプローチ
このアプローチは、従来の日本の会計制度で規定されている重要性の判断に関するものをかき集めて、それをグループ会計方針書に反映するやり方です。
これには以下のメリットがあります。

1.会計監査人を説得しやすい。
 従来も認められてきた規準なので、今後も認めてくれと言いやすいでしょう。
2.検討する工数が相当程度削減できる。
 まっさらな状態から自らの判断規準を策定することは、大変な時間が必要です。
3.高い能力が必要ない。
 自らの判断規準を策定するためには、検討する時間だけでなく、なによりも
 IFRSの基本となる考え方(概念フレームワーク)を理解する能力が必須ですが、
 このアプローチではそのような能力も必要ないのです。

ただし、このアプローチには、以下のデメリットがあります。

1.従来の重要性規定では重要とされても、自社グループにとってはあまり
 重要ではないものまで、原則的な取扱いをしなければならなくなる
 可能性がある。
2.IFRSによる決算が本格化した時に、概念フレームワークと整合性のない
 グループ会計方針について、会計監査人から不適切との判断をされる
 可能性があり、その際には、ふりだしに戻って、自社独自の判断規準の
 策定を余儀なくされる。


2.独自規定創造アプローチ
従来の日本の会計制度で規定されている重要性の判断規準とは全く別のものとして、IFRSの概念フレームワークの考え方に沿うような規定を自ら作り上げて、グループ会計方針書に反映するやり方です。
これには以下のメリットがあります。

1.自社グループにとって重要ではないものには、簡便的な取扱いにするか、
 全く処理しないなど、自社グループに合った取扱いができる。
2.IFRSによる決算が本格化した際に、規準を作り直す必要がない。

ただし、このアプローチには、以下のデメリットがあります。

1.会計監査人の理解が得られにくい。
 IFRSの概念フレームワークを正しく理解している公認会計士はまだまだ
 十分とは言えないようです。
 その根拠は、概念フレームワークに関するIASBの原文やASBJの訳文が、
 非常に難解であり、日本公認会計士協会での研修内容をみても、
 概念フレームワークの講習が十分には行われていないことにあります。
 つまり公認会計士一人びとりの自修に頼っている状況なのです。
 したがって、いくら自分たちで概念フレームワークに沿った規定だと言っても、
 会計監査人にそれを理解する能力がないと、適切な理解が得られないという
 リスクがあります。
2.検討する工数が相当程度必要になる。
 1から自らの判断規準を策定することは、大変な時間が必要になります。
3.概念フレームワークに関する十分な理解が必要になる。
 概念フレームワークをきちんと理解していることが大前提になります。

2の独自規定創造アプローチは、難易度も高くいばらの道とも言えるでしょう。
実際、これができないとなると、残念ながら1の従来規定引用アプローチを基本に検討するしかないと思います。

以上




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第62回 「棚卸資産の評価とAging(長期滞留)」
第61回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨(その2)」
第60回 「IFRSの誤解:海外子会社の機能通貨」
第59回 「IFRSの誤解:IFRSは投資家にとっても役に立たない」
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第57回 「グループ会計方針での重要性の判断規準」
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第5回 「定額法への減価償却方法の変更の動向」
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第3回 「現在の決算手続きに影響を与えかねない経済的耐用年数の決定」
第2回 「経済的耐用年数のあの手この手」
第1回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応」

著者プロフィール

中田 清穂(なかた せいほ)
青山監査法人にて米国基準での連結財務諸表監査に7年間従事。
旧PWCに転籍後、連結経営システム構築プロジェクト(約10社)に従事。
その他に経理業務改善プロジェクトや物流管理プロジェクトにて、現場業務の現状分析や改善提案に参画。
旧PWC退社後、DIVA社を設立し、取締役副社長に就任。DIVA社退社後、独立。