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中田清穂のIFRS徹底解説

第62回 「棚卸資産の評価とAging(長期滞留)」

IAS第2号「棚卸資産」の第9項に、棚卸資産の評価原則ともいうべき以下の記載があります。

 棚卸資産は、原価と正味実現可能価額との
 いずれか低い額により測定しなければならない。

正味実現可能価額が取得原価よりも低い場合に、帳簿価額を正味実現可能価額まで評価減する根拠は、IAS第2号「棚卸資産」の第28項に記載されているのですが、『資産はその販売又は利用によって実現すると見込まれる額を超えて評価すべきではない』という「資産」の評価に関する基本的な考え方にあります。
これは、減損会計の根底にある考え方と同じものです。

そして、同28項は、評価減を実施する例として以下の項目をあげています。
(1)棚卸資産が損傷した場合
(2)その全部又は一部が陳腐化した場合
(3)その販売価格が下落した場合
(4)完成に必要な見積原価又は販売に要する見積費用が増加した場合
これらはいずれも、取得原価のままでは「その販売又は利用によって実現すると見込まれる額を超えて評価」することになってしまうケースに当たります。

良く見ると、この中には、いわゆる「滞留による場合」が示されていません。

日本の企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」の第9項には、滞留している棚卸資産について明文規定があります。
企業会計基準第9号の第9項では、正味売却価額を合理的に算定することが困難な場合には、以下の二つの方法で処理することを認めています。
(1)処分見込額まで切り下げる
(2)一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる
この(2)の方法の具体的な例としては、

 滞留月数が、
  3ヶ月を超えると50%評価減
  6か月を超えると90%評価減
   12か月を超えると100%評価減
  を実施する。

といったような内容で、規則的に帳簿価額を切り下げるものです。
日本の企業では、非常に多く採用されていると思われます。

しかし、冒頭に説明した通り、IAS第2号「棚卸資産」では、滞留を原因とする評価減の規定はありません。
したがって、現在IFRSの導入を検討している企業では、いわゆるAgingによる規則的な滞留資産の評価減が、IFRSでは認められないと解釈して、IFRSを適用して財務報告をする場合には、滞留を原因とする評価減は行わないとするグループ会計方針を策定しているケースがあるようです。

ここで、IFRSでは滞留を原因とする評価減は本当に認められないのか、ということについて検討します。

確かに、IAS第2号第9項には、「原価と正味実現可能価額とのいずれか低い額」で評価するように求めていますが、より重要なのは、『資産はその販売又は利用によって実現すると見込まれる額を超えて評価すべきではない』という考え方です。

したがって、滞留しているという事実が、「販売又は利用によって実現すると見込まれる額」が低下していることの兆候であるならば、評価減を行う必要があると思われます。
また、滞留している場合に正味実現可能価額を見積もることが困難な場合には、過去の実績などを根拠として、規則的な評価減を行うことも問題ないと考えられます。

また、このように正味実現可能価額以外の測定について、IFRSで全く認められていないかというと、そうではありません。

IAS第2号第32項では、原材料の測定方法として、再調達原価による測定が認められる場合について規定しています。
つまり、IFRSでは、正味実現可能価額以外の測定も、『資産はその販売又は利用によって実現すると見込まれる額を超えて評価すべきではない』という考え方に沿っていれば、否定していないのです。

したがって、私の考えでは、明文はありませんが、IFRSでもAgingによる滞留在庫の評価減が認められると考えられますので、ぜひ参考にしていただければと思います。


以上

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第1回 「有形固定資産(初度適用)のみなし原価の実務対応」

著者プロフィール

中田 清穂(なかた せいほ)
青山監査法人にて米国基準での連結財務諸表監査に7年間従事。
旧PWCに転籍後、連結経営システム構築プロジェクト(約10社)に従事。
その他に経理業務改善プロジェクトや物流管理プロジェクトにて、現場業務の現状分析や改善提案に参画。
旧PWC退社後、DIVA社を設立し、取締役副社長に就任。DIVA社退社後、独立。