SSUGは会員の自己研鑽と相互の新睦を目的とする団体です。

税務会計業務のポイント

第26回 「急激な円高進行 為替換算に大きな変動があった際のポイントとは?」

■急激な円高が進行
平成23年8月19日、対ドル円相場が一時、75.95円と最高値を更新しました。最高値を更新した要因は、リーマンショック以降の国際的金融不安、ギリシャの財政危機による円買い、東日本大震災による日本企業の外貨建資産売却による円転などが考えられています。

急激な為替市場の変動により、企業の損益は大きなインパクトを受けます。今回は、急激な円高による為替差損益の税務のポイントについて解説します。

■期末為替換算の原則
外貨建資産・負債については、金融商品会計基準の時価評価の適用に合わせ、期末換算規定が定められています。

会計と税務における外貨建資産・負債の期末換算方法をまとめると図表の通りとなります。



税務上、外貨建資産・負債の期末の換算は、発生時換算法と期末時換算法のいずれかを選定することになります。選定は、外国通貨の種類ごとに、かつ、一定の区分ごとに行います。

換算方法を選定しなかった場合には次のそれぞれの換算方法(以下、「法定換算方法」という)により換算することになります。

短期外貨建債権債務 ・・・期末時換算法
長期外貨建債権債 ・・・発生時換算法
売買目的外有価証券
(償還期限及び償還金額の定めのあるもの)
・・・発生時換算法
短期外貨預金 ・・・期末時換算法
長期外貨預金 ・・・発生時換算法

期末換算方法を選定していない場合に、会計上の換算方法と税務上の法定換算方法が異なるときは、会計と税務で乖離が生じることになります。ただし、取引日の属する事業年度の確定申告期限までに、換算方法を選定し届出をすれば会計と税務は一致することになります。

■会計と税務の法定換算方法が乖離している資産・負債で重要なもの
ここで、会計上と税務上の法定換算方法で乖離が生じるもので重要な項目を確認しておくと次のものが該当します。

長期外貨建債権・債務
満期保有目的有価証券
その他有価証券

この3つは、会計上は期末時換算を行うが、税務上は発生時換算のものです。

特に外貨建有価証券である②、③については注意が必要です。
外貨建ての満期保有目的有価証券、その他有価証券について、会計上は期末時の為替相場で換算することとなっています。したがって、換算差額については、為替差損益として損益計算書に反映されることになります。それに対し、税務上の法定換算方法は、発生時換算法であるため、換算方法の選定をしなかった場合には、申告調整が必要となります。

■外貨建て有価証券について強制評価減を適用する場合
事業年度終了の時において有する外貨建有価証券について、強制評価減を適用する場合があります。この場合、順序としては、まず、強制評価減を適用し評価損を計上し、その評価損適用後に為替換算を行うことになります

外貨建有価証券について、強制評価減を行った場合で、税務上の要件を満たしているときは、その評価損は損金算入することができます。
外国法人の発行する有価証券につきその有価証券の発行法人の資産状態が著しく悪化したかどうかを判定する場合には、原則として、その有価証券を取得した日におけるその発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額とその事業年度終了の日におけるその発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額に基づいてその比較を行います。

なお、1株又は1口当たりの純資産価額は、その発行法人がその会計帳簿の作成に当たり使用する外国通貨表示の金額により計算した金額で行うのがポイントです。円換算後の金額をベースに判断するものではないので、注意してください

次に、為替換算を行います。上記のとおり会計と税務で換算方法が異なるものについては申告調整が必要となります。例えば、その他有価証券については、会計上は期末時の為替相場で換算する。それに対し、税務上、届出がない場合、その他有価証券について発生時換算法が適用されることになり、申告調整が必要となります。

■為替相場が著しく変動した場合に特例あり
為替相場が著しく変動した場合ついて、税務上、特例が設けられています。

事業年度終了の時において有する個々の外貨建資産・負債の為替相場が著しく変動した場合には、その外貨建資産・負債と通貨の種類を同じくする外貨建資産・負債のうち為替相場が著しく変動したもののすべてについて、これらの取得又は発生の基因となった外貨建取引をその事業年度終了の時において行ったものとみなして、それに係る全ての外貨建資産・負債につき期末換算を行うことができます

つまり、著しく為替相場が変動した場合には、原則にかかわらず、期末換算を行うことができるのです。

なお、為替相場が著しく変動した場合とは、次の算式により計算した割合がおおむね 15%以上となるときです。

(算式)


この規定が適用される場合、会計上と税務上の法定換算方法の乖離があるものでも期末換算に統一されることになり、申告調整が不要になります。

バックナンバ

第125回「所得控除の活用による所得税の節税対策」
第124回「年末調整の変更点とポイント」
第123回「海外進出時の税務上のポイント」
第122回「民法改正(相続編)の概要と施行時期」
第121回「節税目的の定期保険等の通達改正について」
第120回「消費税率引き上げ直前の確認事項」
第119回 「役員給与に関する税務のポイント」
第118回 「賃上げ等の促進に係る税制」
第117回 「平成31年3月決算の税務申告のポイント」
第116回 「平成30年分所得税確定申告のポイント」
第115回 「法人税に関する2019年税制改正のポイント」
第114回 「平成31年度 税制改正(速報)」
第113回 「電子申告義務化のポイント」
第112回 「中小企業における移転価格税制の基礎」
第111回 「平成30年税制改正で大きく改正された特例事業承継税制について」
第110回 「消費税の軽減税率制度」
第109回 「法人の税務調査の基礎知識」
第108回 「中小企業向け補助金の活用」
第107回 「出向者給与に係わる税務上の取扱い」
第106回 「相続対策で重要な3つの対策」
第105回 「平成30年3月決算の税務申告のポイント」
第104回 「平成30年税制改正:電子申告の義務化とそれに伴う整備」
第103回 「仮想通貨に関する所得税の取り扱い」
第102回 「平成30年度 税制改正(速報)」
第101回 「国際電子商取引に係る消費税の課税」
第100回 「平成29年度税制改正による所得拡大促進税制について」
第99回 「法定相続情報証明制度」
第98回 「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」
第97回 「設備投資に対する中小企業優遇税制」
第96回 「積立NISAについて」
第95回 「個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)の活用」
第94回 「海外勤務者の税務上の留意点」
第93回 「平成29年3月決算の税務申告のポイント」
第92回 「(確定申告特集)マイホームの譲渡所得について」
第91回 「平成29年税制改正を踏まえた所得拡大促進税制のおさらい」
第90回 「平成29年度税制改正について」
第89回 「ふるさと納税と義援金」
第88回 「平成28年「年末調整」の留意事項について」
第87回 「設備投資に対する優遇措置について」
第86回 「税務調査関連の改正について」
第85回 「租税条約の基礎と実務上の留意点」
第84回 「平成28年度改正でさらに要件緩和されたスキャナ保存制度について」
第83回 「相続税の基礎知識(計算編)」
第82回 「適格請求書等保存方式(インボイス方式)の導入について」
第81回 「平成28年4月から始まる新税制」
第80回 「平成28年3月決算の申告ポイント」
第79回 「平成27年確定申告のポイント」
第78回 「平成28年度税制改正大綱のまとめ」
第77回 「『国外財産調書』と『財産債務調書』について」
第76回 「マイナンバー制度に関する税務の再確認」
第75回 「贈与税の取扱について」
第74回 「国境を越えた役務提供に係る消費税」
第73回 「税務調査の時期がこれから到来します」
第72回 「役員の登記に関する改正と役員報酬の決定」
第71回 「消費税軽減税率の動向について」
第70回 「マイナンバーで変わる経理と対応費用の取扱いについて」
第69回 「スキャナ保存制度の要件が緩和されます」
第68回 「平成27年3月期決算の税務ポイント」
第67回 「平成26年分確定申告のポイント
第66回 「平成27年度税制改正(速報)」
第65回 「生産性向上設備投資促進税制の特別償却と税額控除のどちらを選択するか」
第64回 「平成28年1月より適用されるマイナンバー制度に備えて」
第63回 「2015年1月より適用される相続・贈与の主要改正点」
第62回 「役員に関する経費の注意点」
第61回 「骨太方針を受けた法人税改革の方向性」
第60回 「消費税8%後に注意すべき事項」
第59回 「生産性向上設備投資促進税制の実務ポイント」
第58回 「所得拡大促進税制の改正ポイント」
第57回 「交際費の枠が4月から広がります」
第56回 「いよいよ3月決算、新税制の適用をお忘れなく」
第55回 「平成26年1月から適用される税制」
第54回 「平成26年度税制改正(速報)」
第53回 「年末調整における平成25年の改正点と注意点」
第52回 「消費税増税に対応する販売戦略について」
第51回 「10月1日、8%消費税増税が決定。同時に税制改正大綱も発表されました。」
第50回 「外国法人・非居住者に対する支払と源泉徴収義務」
第49回 「新年度から適用が始まる法人税制 その3」
第48回 「消費税転嫁対策法の成立で税率引き上げに向けての事前準備を」
第47回 「新年度から適用が始まる法人税制 その2」
第46回 「新年度から適用が始まる法人税制 その1」
第45回 「平成25年3月期 決算・申告にあたっての留意点2」
第44回 「平成25年3月期 決算・申告にあたっての留意点」
第43回 「平成25年度税制改正について(速報)」
第42回「復興特別税 会社の法人税申告における税額控除で注意すべき点」
第41回「2013年から始まる復興特別所得税
     会社における源泉実務で注意すべき点」

第40回 「2012年も年末調整の時期に突入」
第39回 「税務調査手続きが明確に」
第38回 「消費税改正に向けて企業が対処すべき課題とは?」
第37回 「現物給与と隣接経費の取扱い」
第36回 「社会保障と税の一体改革」
第35回 「決算期の変更を行う会社が増えているようです」
第34回 「株主総会終了後の重要な手続きをお忘れなく」
第33回 「調査にも種類はいろいろ」
第32回 「決算前、税効果会計の適用税率に注意」
第31回 「消費税率の引き上げで企業はどうする?」
第30回 「多くの企業に影響のある税制改正はどうなった? ~平成23年税制改正の成立と24年改正大綱の発表~」
第29回 「消費税改正への対応を進めるには・・・」
第28回 「平成23年税制改正で中間申告はどう変わった?」
第27回 「税務当局への相談方法の種類は?」
第26回 「急激な円高進行 為替換算に大きな変動があった際のポイントとは?」
第25回 「消費税95%ルールの見直しは要注意!」
第24回 「6月30日を越えて平成23年税制改正の動向は?」
第23回 「過年度遡及会計基準と税務の取り扱いについて」
第22回 「東日本大震災における特別税務(法人関係)と平成23年税制改正の今後」
第21回 「グループ法人税制と連結納税制度の比較」
第20回 「税務調査への対応とポイント」
第19回 「全面適用開始! グループ法人税制」
第18回 「会社清算時の課税の変更について」
第17回 「経営不振の子会社・関連会社の支援を行う場合」
第16回 「出向者給与の取扱い」
第15回 「決算書からわかる経営分析」
第14回 「帳簿書類等の保存について」
第13回 「税金のペナルティーいろいろ」
第12回 「修繕費と資本的支出の区分」
第11回 「事業承継税制 贈与税の納税猶予」
第10回 「役員給与の減額改定について」
第9回 「上場有価証券の税務上の評価損について」
第8回 「欠損金の繰戻し還付制度について」
第7回 「海外子会社配当の益金不算入制度の創設について」
第6回 「証券税制について」
第5回 「交際費等と寄附金」
第4回 「報酬・料金等に係る源泉徴収制度について」
第3回 「中小企業に対する優遇税制について」
第2回 「貸倒損失の税務上の処理について」
第1回 「取締役及び監査役の責任範囲と訴訟リスクについて」

プロフィール

アクタスマネジメントサービス㈱/アクタス税理士法人

税理士、公認会計士、社会保険労務士など100名を超えるプロフェッショナルが中心となり、クライアントのライフステージに応じたあらゆるニーズに対応したサービスを提供してます。http://www.actus.co.jp/