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税務会計業務のポイント

第109回 「法人の税務調査の基礎知識」

税務署の事務年度は7月から6月となっており、7月には人事異動が行われます。人事異動後の新しくなった組織で税務調査が本格化してきます。税務調査の連絡である「事前通知」の電話が増えるのも、やはりこの時期となります。

税務調査とは
税務調査には、任意調査と強制調査があります。国税通則法にもとづき納税者の同意のもと国税調査官が実施するのが任意調査です。一般的に多くの会社が受ける税務調査は任意調査になります。また、国税犯則取締法により裁判所の令状を得て国税局査察部が実施する調査が強制調査になります。

税務調査の手続き
任意調査における具体的な調査手続は以下のように進められます。

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1.税務調査前(事前通知) 
 納税者と税理士の双方に対して、「日時、場所、対象税目、対象期間、調査目的、
 調査官の氏名等」の事前通知事項を原則電話により通知されます。なお、税務代理
 権限証書に納税者の同意が記載されている場合には、税理士に対してのみ通知が
 行われます。

2.実地調査(質問検査権と帳簿書類の提示又は提出)
 調査官は、納税義務者等に「質問」し、その事業に関する帳簿書類その他の物件を
 「検査」し又はその物件の「提示や提出」を求めることができます。調査官の
 「質問」に対しては、当然ですが正確に回答する必要があり、偽りの答弁や偽りの
 記載をした資料の提示等をした場合などには、1年以下の懲役又は50万円以下の
 罰金に処せられます。

3.税務調査終了時
(更正決定等をすべきと認められない旨の通知又は修正申告等の勧奨)

 調査の結果、修正すべき事項がない場合、その旨が書面により通知されます。
 一方、修正すべき誤りが認められた場合、納税者に対してその調査結果の内容や
 金額、理由などが原則「口頭」で説明され、修正申告などの勧奨がされます。
 なお、勧奨に応じるかどうかは、納税者の任意となります。なお、修正申告等の
 勧奨に応じない場合には、税務署長が更正又は決定の処分を行い、更正又は決定の
 通知書が送られます。


主な調査項目と確認されるポイント
税務調査の主な調査項目と確認ポイントは以下の通りです。取引の根拠書類の整備が重要となります。

項目
主に確認されるポイント
売上・仕入
・売上など計上漏れや除外をしていないか
・締め後売上も把握されているか
・仕入の過大計上がされていないか
棚卸資産
・仕掛原価が計上されているか
・実地棚卸は正しく行われているか
・棚卸資産の評価額は適正か
・預け在庫なども棚卸されているか
人件費
・架空人件費が計上されていないか
・決算賞与の支給要件は満たされているか
・現物給与となるものが他科目に計上されていないか
費用項目
・交際費や寄附金となるものが別科目で計上されていないか
・貸倒損失は計上要件が満たされて、
 事実関係を説明できる書類はあるか
固定資産
修繕費
・付随費用の計上もれはないか
・事業供用日は正しい日となっているか
・資本的支出と修繕費の区分に誤りがないか


Q1.税務調査を断ることは可能なものでしょうか。

A1.税務調査は、国税庁等の職員の質問検査権に基づき行われますが、その質問検査権に基づく帳簿書類等の提示や提出の申出に対し、正当な理由がないのに提示や提出を拒んだり、虚偽の記載をした帳簿書類等を提示や提出した場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されることがあります。一般的に受忍義務があるといえます。

Q2.私物に対し、提示・提出を求められることはありますか。

A2.例えば、法人税の調査において、その法人の代表者名義の個人預金について事業関連性が疑われる場合にその通帳の提示や提出を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものと考えられております。ただし、調査官は、その提示や提出が必要とされる趣旨を説明し、納税者の理解を得ることが必要とされています。

Q3.調査結果に不満があり、修正申告の勧奨に応じず更正された場合、なにができるのでしょうか。

A3.税務調査において指摘を受け、税務署長等から「更正又は決定」の処分をされた場合、その処分について不服があるときは、青色申告者の場合、国税不服審判所長に対する「審査請求」と、税務署長等に対する「再調査の請求」のいずれかを選択できます。国税不服審判所での結果に対してなお不服である場合は、裁判所に対し訴訟を起こすことになります。

Q4.実地調査前までに修正申告を提出したときのペナルティが改正されたようですが。

A4.平成28年度に改正されるまでは実地調査が行われるまでに修正申告を提出した場合には、ペナルティがありませんでした。これが、平成29年1月1日以後に申告期限が到来する国税または地方税から、「調査通知」から調査初日までに提出した修正申告について納付すべき税額の5%の過少申告加算税が新たに課されることとなりました。
「調査通知」とは、「日時、場所、対象税目、対象期間、調査目的、調査官の氏名等」の11項目全てを通知しなければならない事前通知とは異なり、「実地調査を行う旨、調査対象期間、調査対象税目」の3項目を通知することで完了するもので、この通知後に修正申告を提出する場合には加算税が課されることになります。

Q5.税務調査の実地件数が減少したと言われていますが、どの程度減ったのでしょうか。

A5.税務調査の手続きに変更があった後、全国の法人の調査件数は改正のあったH24の事務年度以降、10万件を超えることはなくなりました。詳細な推移は以下をご参照ください。
(単位:千件)    
事務年度
H23
H24
H25
H26
H27
H28
実地調査件数
129
93
91
95
94
97

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バックナンバ

第126回 「令和2年度 税制改正(速報)」
第125回「所得控除の活用による所得税の節税対策」
第124回「年末調整の変更点とポイント」
第123回「海外進出時の税務上のポイント」
第122回「民法改正(相続編)の概要と施行時期」
第121回「節税目的の定期保険等の通達改正について」
第120回「消費税率引き上げ直前の確認事項」
第119回 「役員給与に関する税務のポイント」
第118回 「賃上げ等の促進に係る税制」
第117回 「平成31年3月決算の税務申告のポイント」
第116回 「平成30年分所得税確定申告のポイント」
第115回 「法人税に関する2019年税制改正のポイント」
第114回 「平成31年度 税制改正(速報)」
第113回 「電子申告義務化のポイント」
第112回 「中小企業における移転価格税制の基礎」
第111回 「平成30年税制改正で大きく改正された特例事業承継税制について」
第110回 「消費税の軽減税率制度」
第109回 「法人の税務調査の基礎知識」
第108回 「中小企業向け補助金の活用」
第107回 「出向者給与に係わる税務上の取扱い」
第106回 「相続対策で重要な3つの対策」
第105回 「平成30年3月決算の税務申告のポイント」
第104回 「平成30年税制改正:電子申告の義務化とそれに伴う整備」
第103回 「仮想通貨に関する所得税の取り扱い」
第102回 「平成30年度 税制改正(速報)」
第101回 「国際電子商取引に係る消費税の課税」
第100回 「平成29年度税制改正による所得拡大促進税制について」
第99回 「法定相続情報証明制度」
第98回 「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」
第97回 「設備投資に対する中小企業優遇税制」
第96回 「積立NISAについて」
第95回 「個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)の活用」
第94回 「海外勤務者の税務上の留意点」
第93回 「平成29年3月決算の税務申告のポイント」
第92回 「(確定申告特集)マイホームの譲渡所得について」
第91回 「平成29年税制改正を踏まえた所得拡大促進税制のおさらい」
第90回 「平成29年度税制改正について」
第89回 「ふるさと納税と義援金」
第88回 「平成28年「年末調整」の留意事項について」
第87回 「設備投資に対する優遇措置について」
第86回 「税務調査関連の改正について」
第85回 「租税条約の基礎と実務上の留意点」
第84回 「平成28年度改正でさらに要件緩和されたスキャナ保存制度について」
第83回 「相続税の基礎知識(計算編)」
第82回 「適格請求書等保存方式(インボイス方式)の導入について」
第81回 「平成28年4月から始まる新税制」
第80回 「平成28年3月決算の申告ポイント」
第79回 「平成27年確定申告のポイント」
第78回 「平成28年度税制改正大綱のまとめ」
第77回 「『国外財産調書』と『財産債務調書』について」
第76回 「マイナンバー制度に関する税務の再確認」
第75回 「贈与税の取扱について」
第74回 「国境を越えた役務提供に係る消費税」
第73回 「税務調査の時期がこれから到来します」
第72回 「役員の登記に関する改正と役員報酬の決定」
第71回 「消費税軽減税率の動向について」
第70回 「マイナンバーで変わる経理と対応費用の取扱いについて」
第69回 「スキャナ保存制度の要件が緩和されます」
第68回 「平成27年3月期決算の税務ポイント」
第67回 「平成26年分確定申告のポイント
第66回 「平成27年度税制改正(速報)」
第65回 「生産性向上設備投資促進税制の特別償却と税額控除のどちらを選択するか」
第64回 「平成28年1月より適用されるマイナンバー制度に備えて」
第63回 「2015年1月より適用される相続・贈与の主要改正点」
第62回 「役員に関する経費の注意点」
第61回 「骨太方針を受けた法人税改革の方向性」
第60回 「消費税8%後に注意すべき事項」
第59回 「生産性向上設備投資促進税制の実務ポイント」
第58回 「所得拡大促進税制の改正ポイント」
第57回 「交際費の枠が4月から広がります」
第56回 「いよいよ3月決算、新税制の適用をお忘れなく」
第55回 「平成26年1月から適用される税制」
第54回 「平成26年度税制改正(速報)」
第53回 「年末調整における平成25年の改正点と注意点」
第52回 「消費税増税に対応する販売戦略について」
第51回 「10月1日、8%消費税増税が決定。同時に税制改正大綱も発表されました。」
第50回 「外国法人・非居住者に対する支払と源泉徴収義務」
第49回 「新年度から適用が始まる法人税制 その3」
第48回 「消費税転嫁対策法の成立で税率引き上げに向けての事前準備を」
第47回 「新年度から適用が始まる法人税制 その2」
第46回 「新年度から適用が始まる法人税制 その1」
第45回 「平成25年3月期 決算・申告にあたっての留意点2」
第44回 「平成25年3月期 決算・申告にあたっての留意点」
第43回 「平成25年度税制改正について(速報)」
第42回「復興特別税 会社の法人税申告における税額控除で注意すべき点」
第41回「2013年から始まる復興特別所得税
     会社における源泉実務で注意すべき点」

第40回 「2012年も年末調整の時期に突入」
第39回 「税務調査手続きが明確に」
第38回 「消費税改正に向けて企業が対処すべき課題とは?」
第37回 「現物給与と隣接経費の取扱い」
第36回 「社会保障と税の一体改革」
第35回 「決算期の変更を行う会社が増えているようです」
第34回 「株主総会終了後の重要な手続きをお忘れなく」
第33回 「調査にも種類はいろいろ」
第32回 「決算前、税効果会計の適用税率に注意」
第31回 「消費税率の引き上げで企業はどうする?」
第30回 「多くの企業に影響のある税制改正はどうなった? ~平成23年税制改正の成立と24年改正大綱の発表~」
第29回 「消費税改正への対応を進めるには・・・」
第28回 「平成23年税制改正で中間申告はどう変わった?」
第27回 「税務当局への相談方法の種類は?」
第26回 「急激な円高進行 為替換算に大きな変動があった際のポイントとは?」
第25回 「消費税95%ルールの見直しは要注意!」
第24回 「6月30日を越えて平成23年税制改正の動向は?」
第23回 「過年度遡及会計基準と税務の取り扱いについて」
第22回 「東日本大震災における特別税務(法人関係)と平成23年税制改正の今後」
第21回 「グループ法人税制と連結納税制度の比較」
第20回 「税務調査への対応とポイント」
第19回 「全面適用開始! グループ法人税制」
第18回 「会社清算時の課税の変更について」
第17回 「経営不振の子会社・関連会社の支援を行う場合」
第16回 「出向者給与の取扱い」
第15回 「決算書からわかる経営分析」
第14回 「帳簿書類等の保存について」
第13回 「税金のペナルティーいろいろ」
第12回 「修繕費と資本的支出の区分」
第11回 「事業承継税制 贈与税の納税猶予」
第10回 「役員給与の減額改定について」
第9回 「上場有価証券の税務上の評価損について」
第8回 「欠損金の繰戻し還付制度について」
第7回 「海外子会社配当の益金不算入制度の創設について」
第6回 「証券税制について」
第5回 「交際費等と寄附金」
第4回 「報酬・料金等に係る源泉徴収制度について」
第3回 「中小企業に対する優遇税制について」
第2回 「貸倒損失の税務上の処理について」
第1回 「取締役及び監査役の責任範囲と訴訟リスクについて」

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