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税務会計業務のポイント

第111回 「平成30年税制改正で大きく改正された特例事業承継税制について」

事業承継税制は、中小企業の株式承継に対する相続税や贈与税の負担を軽減するために、平成21年税制改正により創設された制度ですが、使い勝手が悪く、現在まで何度か改正が行われてきております。
そのような状況下、平成30年の税制改正において、現行の事業承継税制を抜本的に見直し、実質的に株式承継の税負担をゼロにした「特例事業承継税制」が誕生しました。経営者の高齢化が進む中、新しい特例事業承継税制を活用することで円滑な事業承継を行えることが期待されます。

特例事業承継税制とは
事業承継税制とは、先代の経営者から後継者へ代表取締役の就任と自社株式の承継(贈与又は相続)を実施し一定の要件を満たすことで、対象の株式につき発生する相続税・贈与税の納税を猶予できる制度です。そして新しく創設された特例事業承継税制は、10年間の期間限定(平成30年1月1日~平成39年12月31日)の税制であり、従前より下記の主要項目について大きな改善が行われています。

項目
改正前の事業承継税制
特例事業承継税制
対象株式 税制の対象となる株式は全体の
2/3であり、相続税計算時に
納税猶予の対象となる株式はその
80%となるため、全体の53.3%が
納税猶予の対象となります。
税制の対象となる株式が2/3から
100%になり、相続税計算時に
納税猶予の対象となる株式が
80%から100%になります。
雇用確保
要件
納税の猶予を継続する要件の一つ
である雇用確保要件(常時使用する
従業員数が5年平均で贈与又は
相続等時の従業員数の80%を下回ら
ないこと)が満たされない場合、
納税の猶予が取り消されます。
左記要件が満たされなくても、
認定支援機関等が一定の書類を
都道府県に提出すれば、納税猶予の
取消は無かったものとして
取り扱われることになり、実質的に
要件が撤廃することになりました。
相続時
精算課税
直系尊属から20歳以上の直系卑属
である推定相続人又は孫が相続時
精算課税の対象となります。
特例事業承継税制では第三者に対する
贈与についても適用でき、親族以外の
後継者に対しても利便が図れるように
なりました。
先代経営者
後継者
先代経営者及び後継者の人数は
1人となります。
先代経営者以外の株主からの承継も
適用の対象となり、また、後継者は
最大3人となります。
減免制度 民事再生や会社更生があった時に
株式評価を見直して相続税を
再計算し、承継時の猶予税額との
差額を免除することができます。
一定の要件のもと株式譲渡等をした
際に、株式評価を見直して猶予税額
との差額を免除することができ、
将来のリスクを減らすことが可能と
なりました。

なお、特例事業承継税制を適用できる会社は中小企業に限られ、上場会社、休眠会社、風俗営業会社及び資産管理会社は税制の対象から除かれます。

特例事業承継の適用を受けるための手続イメージ
 (生前贈与を前提とした事業承継の一例)

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Step1 平成35年3月31日までに承継計画を提出し都道府県から認定を受けます
    (認定書交付)。

Step2 平成39年12月31日までに先代経営者から後継者への一括贈与を行い、
    贈与税申告書を提出することで贈与税の納税が猶予されます。

Step3 先代経営者が死亡した場合、都道府県へ贈与税から相続税への切替確認
    手続を行います(死亡の日の翌日から8か月以内に手続)。また、納税が
    猶予されていた贈与税については先代経営者の死亡を契機に免除されます。

Step4 申告期限までに相続税の申告を行うことで、株式に係る相続税については
    その納税の全額が猶予され、後継者は実質的に贈与税・相続税を
    負担しなくて済むことになります。


Q1.特例事業承継税制を適用するにあたり提出する承継計画はどのようなものなのでしょうか。

A1.承継計画は、会社の内容(事業内容・資本金額・従業員数)、先代経営者や後継者の氏名、株式を承継するまでの計画(承継時期・課題)、承継後5年間の経営計画、認定支援機関等の所見等を記載した計画書となります。

Q2.先代経営者や後継者はどのような人が対象となるのでしょうか。

A2.特例事業承継税制では、承継計画に記載のあった先代経営者及び後継者が対象となり、その他の要件については従前の事業承継税制と同様の要件となります。
先代経営者
後継者
・贈与等の日前において代表権を有して
 いたこと
・代表権を有していること
 (贈与時点又は相続後5カ月以内)
・同族で議決権の過半数を有し、同族内で
 筆頭であったこと
・同族で議決権の過半数を有し、
 同族内で筆頭になること
・贈与時点で代表権を有していないこと
 (贈与税の納税猶予)
・役員を3年以上継続していること
 (贈与税の納税猶予)

・相続開始の直前に役員であること
 (相続税の納税猶予)


Q3.特例事業承継税制を適用できるか確認してみたいのですが。

A3.貴社が事業承継税制の適用要件に合致するか否かは、私どもの担当者が責任をもって確認致しますのでお気軽にご用命ください。なお、国税庁Webサイトには「適用要件チェックリスト」が準備されており、要件や提出必要書類を確認をすることができますので参考にしてください。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/h30pdf/checksheet1.pdf

Q4.納税猶予中に事業の継続が出来なくなってしまった場合の減免制度について詳しく教えてください。

A4.従来の事業承継税制では、贈与・相続時から5年以降に株式の譲渡等をした場合、原則として承継時(贈与・相続時)の株価を基に納税額を計算することになり、経営環境の変化による現況の株式評価と承継時の株式評価の乖離には対応していませんでした。特例事業承継税制では経営環境の変化を示す一定の要件が生じた場合には株価評価の見直しによる減免制度を設けることとしています。

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バックナンバ

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第125回「所得控除の活用による所得税の節税対策」
第124回「年末調整の変更点とポイント」
第123回「海外進出時の税務上のポイント」
第122回「民法改正(相続編)の概要と施行時期」
第121回「節税目的の定期保険等の通達改正について」
第120回「消費税率引き上げ直前の確認事項」
第119回 「役員給与に関する税務のポイント」
第118回 「賃上げ等の促進に係る税制」
第117回 「平成31年3月決算の税務申告のポイント」
第116回 「平成30年分所得税確定申告のポイント」
第115回 「法人税に関する2019年税制改正のポイント」
第114回 「平成31年度 税制改正(速報)」
第113回 「電子申告義務化のポイント」
第112回 「中小企業における移転価格税制の基礎」
第111回 「平成30年税制改正で大きく改正された特例事業承継税制について」
第110回 「消費税の軽減税率制度」
第109回 「法人の税務調査の基礎知識」
第108回 「中小企業向け補助金の活用」
第107回 「出向者給与に係わる税務上の取扱い」
第106回 「相続対策で重要な3つの対策」
第105回 「平成30年3月決算の税務申告のポイント」
第104回 「平成30年税制改正:電子申告の義務化とそれに伴う整備」
第103回 「仮想通貨に関する所得税の取り扱い」
第102回 「平成30年度 税制改正(速報)」
第101回 「国際電子商取引に係る消費税の課税」
第100回 「平成29年度税制改正による所得拡大促進税制について」
第99回 「法定相続情報証明制度」
第98回 「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」
第97回 「設備投資に対する中小企業優遇税制」
第96回 「積立NISAについて」
第95回 「個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)の活用」
第94回 「海外勤務者の税務上の留意点」
第93回 「平成29年3月決算の税務申告のポイント」
第92回 「(確定申告特集)マイホームの譲渡所得について」
第91回 「平成29年税制改正を踏まえた所得拡大促進税制のおさらい」
第90回 「平成29年度税制改正について」
第89回 「ふるさと納税と義援金」
第88回 「平成28年「年末調整」の留意事項について」
第87回 「設備投資に対する優遇措置について」
第86回 「税務調査関連の改正について」
第85回 「租税条約の基礎と実務上の留意点」
第84回 「平成28年度改正でさらに要件緩和されたスキャナ保存制度について」
第83回 「相続税の基礎知識(計算編)」
第82回 「適格請求書等保存方式(インボイス方式)の導入について」
第81回 「平成28年4月から始まる新税制」
第80回 「平成28年3月決算の申告ポイント」
第79回 「平成27年確定申告のポイント」
第78回 「平成28年度税制改正大綱のまとめ」
第77回 「『国外財産調書』と『財産債務調書』について」
第76回 「マイナンバー制度に関する税務の再確認」
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第74回 「国境を越えた役務提供に係る消費税」
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第67回 「平成26年分確定申告のポイント
第66回 「平成27年度税制改正(速報)」
第65回 「生産性向上設備投資促進税制の特別償却と税額控除のどちらを選択するか」
第64回 「平成28年1月より適用されるマイナンバー制度に備えて」
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第62回 「役員に関する経費の注意点」
第61回 「骨太方針を受けた法人税改革の方向性」
第60回 「消費税8%後に注意すべき事項」
第59回 「生産性向上設備投資促進税制の実務ポイント」
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第57回 「交際費の枠が4月から広がります」
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第55回 「平成26年1月から適用される税制」
第54回 「平成26年度税制改正(速報)」
第53回 「年末調整における平成25年の改正点と注意点」
第52回 「消費税増税に対応する販売戦略について」
第51回 「10月1日、8%消費税増税が決定。同時に税制改正大綱も発表されました。」
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第49回 「新年度から適用が始まる法人税制 その3」
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第46回 「新年度から適用が始まる法人税制 その1」
第45回 「平成25年3月期 決算・申告にあたっての留意点2」
第44回 「平成25年3月期 決算・申告にあたっての留意点」
第43回 「平成25年度税制改正について(速報)」
第42回「復興特別税 会社の法人税申告における税額控除で注意すべき点」
第41回「2013年から始まる復興特別所得税
     会社における源泉実務で注意すべき点」

第40回 「2012年も年末調整の時期に突入」
第39回 「税務調査手続きが明確に」
第38回 「消費税改正に向けて企業が対処すべき課題とは?」
第37回 「現物給与と隣接経費の取扱い」
第36回 「社会保障と税の一体改革」
第35回 「決算期の変更を行う会社が増えているようです」
第34回 「株主総会終了後の重要な手続きをお忘れなく」
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第31回 「消費税率の引き上げで企業はどうする?」
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第29回 「消費税改正への対応を進めるには・・・」
第28回 「平成23年税制改正で中間申告はどう変わった?」
第27回 「税務当局への相談方法の種類は?」
第26回 「急激な円高進行 為替換算に大きな変動があった際のポイントとは?」
第25回 「消費税95%ルールの見直しは要注意!」
第24回 「6月30日を越えて平成23年税制改正の動向は?」
第23回 「過年度遡及会計基準と税務の取り扱いについて」
第22回 「東日本大震災における特別税務(法人関係)と平成23年税制改正の今後」
第21回 「グループ法人税制と連結納税制度の比較」
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第16回 「出向者給与の取扱い」
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第14回 「帳簿書類等の保存について」
第13回 「税金のペナルティーいろいろ」
第12回 「修繕費と資本的支出の区分」
第11回 「事業承継税制 贈与税の納税猶予」
第10回 「役員給与の減額改定について」
第9回 「上場有価証券の税務上の評価損について」
第8回 「欠損金の繰戻し還付制度について」
第7回 「海外子会社配当の益金不算入制度の創設について」
第6回 「証券税制について」
第5回 「交際費等と寄附金」
第4回 「報酬・料金等に係る源泉徴収制度について」
第3回 「中小企業に対する優遇税制について」
第2回 「貸倒損失の税務上の処理について」
第1回 「取締役及び監査役の責任範囲と訴訟リスクについて」

プロフィール

アクタスマネジメントサービス㈱/アクタス税理士法人

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