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税務会計業務のポイント

第122回「民法改正(相続編)の概要と施行時期」

2018年7月6日に相続に関する民法等の規定(いわゆる相続法)を改正する法律が成立し、一部の規定が2019年7月1日から施行されております。高齢化の進展など社会環境の変化に対応するため、1980年以来約40年ぶりの改正となります。今回は、改正内容と施行時期等の取り扱いについてご紹介いたします。

■遺産分割に関する見直し
○持ち戻し免除の意思表示の推定規定 (2019年7月1日以後にされた遺贈・贈与から適用)
一定の夫婦間で居住用不動産の遺贈または贈与が行われた場合に、相続発生後の遺産分割において遺産の先渡し(特別受益※)を受けたものとして取り扱わないことにより、遺贈や贈与の趣旨を尊重した遺産分割が可能になりました。

特別受益とは、特定の相続人が被相続人から遺贈または贈与による一定の利益を受けていた場合のその利益のことです。特別受益は、遺産分割時には、遺産の先渡しがあったものとして取り扱われます。

(改正前)
夫婦間において「居住用不動産」の遺贈または贈与が行われたとしても、相続発生時には遺産の先渡し(特別受益)として遺産に含めて計算を行うこととされており、結果、最終的な取得分はその贈与がなかった場合と同じになる取り扱いとなっておりました。
(改正後)
婚姻期間が20年以上である夫婦間において、「居住用不動産」を遺贈または贈与した場合には、原則は特別受益として遺産に含めなくて良いこととなりました。結果、配偶者が「居住用不動産」を確保しつつ遺産分割を行うことができることとなります。

⇒ 税務上は、婚姻期間が20年以上の夫婦間で行われた「居住用不動産」または「居住用不動産取得のための金銭の贈与」について最高2,000万円まで控除できる贈与の特例があります。「居住用不動産」についてこの贈与の特例を利用すると、上記(改正後)の対象となりますが、「居住用不動産の取得のための金銭の贈与」について、贈与の特例を利用した場合には(改正後)の対象外となりますので注意が必要です。

○預貯金の払戻し制度の創設 (2019年7月1日以後にする仮払いから適用)
(改正前)
遺産分割が完了するか、家庭裁判所の許可を得ないと、葬儀費用や相続債務の支払い等として使う場合でも預貯金の払い戻しはできませんでした。
(改正後)
預貯金債権について他の共同相続人の同意や家庭裁判所の判断を経ずに、同一金融機関ごとに150万円を上限として、金融機関の窓口において支払いを受けられるようになりました。また、仮払いの必要性があり、他の共同相続人の利益を害さない限り、申立てにより家庭裁判所の判断で仮払いが認められる要件が緩和されました。

■配偶者保護に関する見直し
○配偶者居住権の創設 (2020年4月1日以後開始した相続から適用)
(改正前)
住宅が第三者に相続された場合など、配偶者の居住が保護されていませんでした。
(改正後)
配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」という配偶者のための2種類の権利が創設されました。
配偶者短期居住権・・・相続開始時に被相続人の自宅に無償で住んでいた配偶者が
            一定期間(最低6か月間)無償でその家を使用することが
            できるとする権利(相続開始により自然に発生
配偶者居住権  ・・・配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の自宅を
            原則として終身の間、無償で使用することができる権利
            (遺産分割、遺贈によって取得させる必要あり
  ⇒ ①②ともに譲渡不可、配偶者の死亡等一定の消滅事由あり
  ⇒ ①の存続期間は、建物の帰属が確定した日か相続開始時から6か月経過日の
    いずれか遅い日
  ⇒ 被相続人と配偶者以外の者が共有している建物の場合、配偶者居住権は
    成立しないので注意が必要

■遺言制度に関する見直し
○自筆証書遺言の方式緩和 (2019年1月13日以後作成の自筆証書遺言から適用)
(改正前)
遺言全文について自書が要求されており、別途目録も全て自書しなければなりませんでした。
(改正後)
添付する財産目録について、自書ではなくパソコンでの作成や、通帳のコピー、不動産の登記事項証明書などを添付することが可能になりました。財産目録の各頁には署名押印が必要となります。

○自筆証書遺言の保管制度の創設 (2020年7月10日から適用)
(改正前)
自筆証書遺言は、自宅や貸金庫などに保管するしかなく、紛失や相続人が遺言に気づかないなど遺言が活かされない可能性がありました。
(改正後)
法務省令で定める様式で作成した、封をしていない遺言書を持参することにより、自筆証書遺言を法務局に保管できるようになりました。なお保管の申請は、遺言者本人が行わなければなりません。

■遺留分制度に関する見直し (2019年7月1日以後開始した相続から適用)
(改正前)
遺留分減殺請求を行うと、対象が物である場合には割合に応じた共有になるとされており、例えば土地や建物などではとても複雑な共有関係が生じる可能性がありました。また、相続人に対する生前 贈与は全ての期間の贈与が対象となる取り扱いとされていました。
(改正後)
遺留分に関する権利の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることとされ、共有状態を解消することができるようになりました。また、相続人に対する生前贈与は相続開始前10年間にされた贈与に限り対象となる取り扱いとされました。

■相続の効力等に関する見直し
○法定相続分を超える部分の承継にかかる第三者対抗要件 (2019年7月1日以後開始した相続から適用)
(改正前)
相続させる旨の遺言等により承継された財産については、登記等の対抗要件なくして第三者に対抗することができるとされていました。
(改正後)
法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないこととなりました。

■相続人以外の者の貢献
○相続人以外の者にかかる特別寄与料制度の創設 (2019年7月1日以後開始した相続から適用)
(改正前)
相続人以外が介護などで尽くしても、相続財産を受け取ることはできませんでした。
(改正後)
相続人以外の被相続人の親族(長男の妻など)が、無償で被相続人の療養看護等を行った場合、相続人に対して金銭の請求をすることができるようになりました。なお、この取得した金銭については、相続税の課税対象となります。

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バックナンバ

第125回「所得控除の活用による所得税の節税対策」
第124回「年末調整の変更点とポイント」
第123回「海外進出時の税務上のポイント」
第122回「民法改正(相続編)の概要と施行時期」
第121回「節税目的の定期保険等の通達改正について」
第120回「消費税率引き上げ直前の確認事項」
第119回 「役員給与に関する税務のポイント」
第118回 「賃上げ等の促進に係る税制」
第117回 「平成31年3月決算の税務申告のポイント」
第116回 「平成30年分所得税確定申告のポイント」
第115回 「法人税に関する2019年税制改正のポイント」
第114回 「平成31年度 税制改正(速報)」
第113回 「電子申告義務化のポイント」
第112回 「中小企業における移転価格税制の基礎」
第111回 「平成30年税制改正で大きく改正された特例事業承継税制について」
第110回 「消費税の軽減税率制度」
第109回 「法人の税務調査の基礎知識」
第108回 「中小企業向け補助金の活用」
第107回 「出向者給与に係わる税務上の取扱い」
第106回 「相続対策で重要な3つの対策」
第105回 「平成30年3月決算の税務申告のポイント」
第104回 「平成30年税制改正:電子申告の義務化とそれに伴う整備」
第103回 「仮想通貨に関する所得税の取り扱い」
第102回 「平成30年度 税制改正(速報)」
第101回 「国際電子商取引に係る消費税の課税」
第100回 「平成29年度税制改正による所得拡大促進税制について」
第99回 「法定相続情報証明制度」
第98回 「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」
第97回 「設備投資に対する中小企業優遇税制」
第96回 「積立NISAについて」
第95回 「個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)の活用」
第94回 「海外勤務者の税務上の留意点」
第93回 「平成29年3月決算の税務申告のポイント」
第92回 「(確定申告特集)マイホームの譲渡所得について」
第91回 「平成29年税制改正を踏まえた所得拡大促進税制のおさらい」
第90回 「平成29年度税制改正について」
第89回 「ふるさと納税と義援金」
第88回 「平成28年「年末調整」の留意事項について」
第87回 「設備投資に対する優遇措置について」
第86回 「税務調査関連の改正について」
第85回 「租税条約の基礎と実務上の留意点」
第84回 「平成28年度改正でさらに要件緩和されたスキャナ保存制度について」
第83回 「相続税の基礎知識(計算編)」
第82回 「適格請求書等保存方式(インボイス方式)の導入について」
第81回 「平成28年4月から始まる新税制」
第80回 「平成28年3月決算の申告ポイント」
第79回 「平成27年確定申告のポイント」
第78回 「平成28年度税制改正大綱のまとめ」
第77回 「『国外財産調書』と『財産債務調書』について」
第76回 「マイナンバー制度に関する税務の再確認」
第75回 「贈与税の取扱について」
第74回 「国境を越えた役務提供に係る消費税」
第73回 「税務調査の時期がこれから到来します」
第72回 「役員の登記に関する改正と役員報酬の決定」
第71回 「消費税軽減税率の動向について」
第70回 「マイナンバーで変わる経理と対応費用の取扱いについて」
第69回 「スキャナ保存制度の要件が緩和されます」
第68回 「平成27年3月期決算の税務ポイント」
第67回 「平成26年分確定申告のポイント
第66回 「平成27年度税制改正(速報)」
第65回 「生産性向上設備投資促進税制の特別償却と税額控除のどちらを選択するか」
第64回 「平成28年1月より適用されるマイナンバー制度に備えて」
第63回 「2015年1月より適用される相続・贈与の主要改正点」
第62回 「役員に関する経費の注意点」
第61回 「骨太方針を受けた法人税改革の方向性」
第60回 「消費税8%後に注意すべき事項」
第59回 「生産性向上設備投資促進税制の実務ポイント」
第58回 「所得拡大促進税制の改正ポイント」
第57回 「交際費の枠が4月から広がります」
第56回 「いよいよ3月決算、新税制の適用をお忘れなく」
第55回 「平成26年1月から適用される税制」
第54回 「平成26年度税制改正(速報)」
第53回 「年末調整における平成25年の改正点と注意点」
第52回 「消費税増税に対応する販売戦略について」
第51回 「10月1日、8%消費税増税が決定。同時に税制改正大綱も発表されました。」
第50回 「外国法人・非居住者に対する支払と源泉徴収義務」
第49回 「新年度から適用が始まる法人税制 その3」
第48回 「消費税転嫁対策法の成立で税率引き上げに向けての事前準備を」
第47回 「新年度から適用が始まる法人税制 その2」
第46回 「新年度から適用が始まる法人税制 その1」
第45回 「平成25年3月期 決算・申告にあたっての留意点2」
第44回 「平成25年3月期 決算・申告にあたっての留意点」
第43回 「平成25年度税制改正について(速報)」
第42回「復興特別税 会社の法人税申告における税額控除で注意すべき点」
第41回「2013年から始まる復興特別所得税
     会社における源泉実務で注意すべき点」

第40回 「2012年も年末調整の時期に突入」
第39回 「税務調査手続きが明確に」
第38回 「消費税改正に向けて企業が対処すべき課題とは?」
第37回 「現物給与と隣接経費の取扱い」
第36回 「社会保障と税の一体改革」
第35回 「決算期の変更を行う会社が増えているようです」
第34回 「株主総会終了後の重要な手続きをお忘れなく」
第33回 「調査にも種類はいろいろ」
第32回 「決算前、税効果会計の適用税率に注意」
第31回 「消費税率の引き上げで企業はどうする?」
第30回 「多くの企業に影響のある税制改正はどうなった? ~平成23年税制改正の成立と24年改正大綱の発表~」
第29回 「消費税改正への対応を進めるには・・・」
第28回 「平成23年税制改正で中間申告はどう変わった?」
第27回 「税務当局への相談方法の種類は?」
第26回 「急激な円高進行 為替換算に大きな変動があった際のポイントとは?」
第25回 「消費税95%ルールの見直しは要注意!」
第24回 「6月30日を越えて平成23年税制改正の動向は?」
第23回 「過年度遡及会計基準と税務の取り扱いについて」
第22回 「東日本大震災における特別税務(法人関係)と平成23年税制改正の今後」
第21回 「グループ法人税制と連結納税制度の比較」
第20回 「税務調査への対応とポイント」
第19回 「全面適用開始! グループ法人税制」
第18回 「会社清算時の課税の変更について」
第17回 「経営不振の子会社・関連会社の支援を行う場合」
第16回 「出向者給与の取扱い」
第15回 「決算書からわかる経営分析」
第14回 「帳簿書類等の保存について」
第13回 「税金のペナルティーいろいろ」
第12回 「修繕費と資本的支出の区分」
第11回 「事業承継税制 贈与税の納税猶予」
第10回 「役員給与の減額改定について」
第9回 「上場有価証券の税務上の評価損について」
第8回 「欠損金の繰戻し還付制度について」
第7回 「海外子会社配当の益金不算入制度の創設について」
第6回 「証券税制について」
第5回 「交際費等と寄附金」
第4回 「報酬・料金等に係る源泉徴収制度について」
第3回 「中小企業に対する優遇税制について」
第2回 「貸倒損失の税務上の処理について」
第1回 「取締役及び監査役の責任範囲と訴訟リスクについて」

プロフィール

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